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狩人と犬、最後の旅
The Last Trapper

2006年8月12日(土)よりテアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマ他全国順次ロードショー

story
ノーマン・ウィンター(本人)は、半世紀にわたって、ロッキー山脈で罠猟を続けてきた“最後の狩人”(ラスト・トラッパー)。ナハニ族インディアンの妻のネブラスカ(メイ・ルー)と大自然の中で暮らしている。彼は、猟を通じて生態系を調整し、脈々と受け継がれてきた自然を守り抜くことに、自身の誇りと生き甲斐を見出してきた。しかし、森林の伐採によって、年々動物たちは減少。狩人を続けていくことの困難に直面したノーマンは、今年限りでロッキーを去る覚悟を決める。
冬の気配が忍び寄ってきたころ、最後の猟の準備を始める。2週間の予定でドーソンの町へ買い出しに出かけたが、そこでシベリアン・ハスキーのナヌークが、車にひかれて命を落とす。犬ぞりのリーダーであり、相棒でもあったナヌークを失った。そんなノーマンは、親しくしている雑貨屋の主人からシベリアン・ハスキーの子犬をもらい受ける。

子犬はアパッシュと名付けられた。もともとレース用に育てられたためか、アパッシュは他の犬たちとなじまず、猟に出ても足手まといになるばかりだ。そんなある日、ノーマンが凍った湖を犬ぞりで横断していたとき、氷が割れ、凍てつく湖水の中にはまりこんでしまった。他の犬たちがパニックに陥り逃げ出したのに対し、ノーマンの呼びかけに応えたのはアパッシュただ一匹。ノーマンは九死に一生を得た。
この出来事から、命の恩人のアパッシュにリーダー犬の素質を見出したノーマンは、ウォークとアパッシュの2匹を犬ぞりの先頭に置き、アパッシュの教育に力を注ぐようになる。そんなノーマンの期待に応え、仲間と協力し、統率する力をつけていくアパッシュ。そんなアパッシュとノーマンの間には、いつしか固い信頼の絆が芽生えていく。 やがてめぐってきた春。ノーマンはアパッシュとウォークの間に生れたかわいい子犬たちを見つめながら命懸けの旅をした先シーズンを思い出す。引退を決意していたが、新しく生れた生命、そしてアパッシュとの絆に明るい希望を見出す・・・。

 


キャスト
ノーマン・ウィンター 、メイ・ルー 、ヴァン・ビビエ
犬: アパッシュ、ウォーク、リレイ、クルベット、ミニク、 ノブコ、
オット、プッシー、ロックス、ソーダ

 


プロダクションノート:
ノーマン・ウィンターとの運命的な出会い 1999年、ニコラス・ヴァニエは、アラスカのスカグウエイからケベックまでのカナダ北極圏全土8600kmを、犬ぞりで100日間かけて横断する「ホワイト・オデッセー:8600キロ」の冒険を敢行した。
彼が、ノーマン・ウィンターと出会ったのは、その冒険の途上でのことだった。かねてから、「グレート・ノースを共に生きる相棒」を探していたヴァニエにとって、自然との調和を重んじながら伝統的な狩人の生活を営んでいるノーマンは、映画を作りたいと思わせるのに十分な存在だった。ヴァニエは言う。「ノーマン・ウィンターは、まさに、自然と調和した生き方そのものが芸術といわれた最後の狩人だ。『狩人と犬、最後の旅』は、自然を愛し、自然をより理解したいと望む人々への、単純で普遍的なテーマを語った映画なのだ」。
-50℃での過酷な撮影 1年以上におよんだ撮影で、ニコラス・ヴァニエ率いるスタッフたちは、気温が零下50℃まで下がるグレート・ノースの冬を二度体験した。『ミクロコスモス』や『WATARIDORI』も手がけているカメラマンのティエリー・マシャドは、その苦労を次のように語る。「強烈な寒さやブリザードなど、撮影に致命的な問題が次々に発生していった。私たち人間も寒さに対する準備が十分ではなかったが、カメラは私たち以上にこの状況への準備が出来ていなかった」。 数カ月の整備を要した撮影機器の準備期間中、マシャドたちは、零下55℃にプログラムできる冷蔵庫を用意。また、レンズ、カメラ本体、バッテリーといった機材や、フィルムの交換にかかる時間などを見直す作業を行い、20℃から零下50℃までの気温の激変に備えた。しかし、実際の撮影現場では、しばしば予想外の出来事に見舞われた。たとえば、カメラ本体は無事だが、移動撮影装置が凍ってしまい、トーチで溶かす必要に迫られたというような事態だ。 いっぽうで、スタッフたちは、そうした苦労の見返りを自然から受けることにもなった。マシャドは言う。「夜になると、空に広がったすばらしいドレープの北極光、オーロラの鑑賞が楽しめた。暗闇と静寂を打ち破る狼の遠吠えが、ここへ我々を招待しているかのようだった。撮影隊の誰ひとりとして、オーロラが星々の間を舞っている光景を忘れないだろう」。
信頼の絆で結ばれた犬と人間 かつてスノーモビルを使い、手ひどい目にあった経験があるノーマン・ウィンターは、冬の間の移動集団として犬ぞりを使い続けている。これには、いくつかのメリットがある。まず、犬は機械と違って故障をしない。また、犬ぞりは、マシーンの行けない場所、とくに急な斜面も問題なく上り降りできる。さらに、オオヤマネコやクズリ、狐、コヨーテなどは、犬の後を追う習性があるため、狩りの労力とエネルギーの節約につながる。しかし、それ以上にノーマンが犬ぞりにこだわるのは、犬たちが彼の伴侶であり、信頼と友情の絆で結ばれたパートナーだからだ。 凍った湖を犬ぞりで走行中のノーマンが、割れた氷の中に投げ出される事故にあったところを、犬たちに救われるという劇中のエピソードは、実際にノーマン自身が体験したことだった。冷水にひたったノーマンは、体温低下のために行動の機敏さを失い、音をたてながら崩れる氷塊の中で、遠のいていくそりによじ登ることもできなくなった。身体は麻痺をおこし始め、空気に触れた瞬間に凍り付く服は、重い足かせとなった。ノーマンは覚悟し、何を期待するわけでもなく、犬たちを呼んだ。その弱々しい声に、主人の苦境と危険性を感じ取ったアパッシュは、自分が生き残るために逃げなければいけないという本能の呼び声と恐怖を克服し、他の犬たちを引きずってノーマンを助けに来たのだ。 いまもこの話をするたび、ノーマンの目からは涙が溢れ出る。そして、この日から、彼とアパッシュは強いパートナーシップで結ばれることになった。
監督のニコラス・ヴァニエは語る。「彼らが視線を合わせるとき、どちらの愛情がより深いのか、私には判断できないほどだ」。 個性豊かな犬たち ノーマンの犬ぞりの犬たちの中で、リーダーをつとめるウォークは、類い希なる知性と経験をそなえた13歳のオス犬。彼は、ニコラス・ヴァニエ監督とノーマン・ウィンターと共に、カナダの北極圏を横断し、アラスカ、ラプランド、ロシアまでを走破する大冒険を繰り広げた経歴を持っている。「彼なしでは同じ映画は作れなかった」と語るヴァニエ監督は、撮影中のウォークの献身的な協力ぶりを、次のように賞賛する。「ウォークは、信じがたい忍耐強さを持っていた。水の中に落ちたり、不安定な氷の上を走ったり、険しい谷を滑り降りたりという、本能にさからったシチュエーションでの撮影を、ウォークはすべてこなした。彼は頼まれたことを何でもやってのけるが、それは私たちへの愛情と友情からだ。ノーマンはウォークに惚れ込んでいて、ウォークもそれに応えた。ウォークは常に指令を先取りし、確実にそれを実行するんだ」。 いっぽう、本作のもうひとりの主役ともいうべきアパッシュは、青い目をしたマヌカンの雰囲気を持つメス犬で、スターの素質を持つ彼女は、ウォークのみならず、すべての男たちの注目をひきつけてやまない魅力にあふれている。その他、優しくて甘えん坊なアメロック、躍動的なミニク、次のリーダーの座を狙っているノブコ、楽天家のプッシー、頑強で思いやり深いロックスなど、犬たちはそれぞれに個性豊か。ノーマンは、そんな彼らの個々の性格を理解し、仲間として共存する関係を築き上げているのだ。



ノーマン・ウィンター :
ロッキー山脈に住み、自給自足の生活を送る最後のトラッパー(罠猟師)。彼の猟のやり方は、飛行機、スノーバイク、電子通信装置といった機械の力を借りない伝統的な罠猟。獲物となる動物たちを観察し、必要な分のみを狩ることで、生態系のバランスを保つ役目を担っている。彼は、小屋やカヌー、雪道を歩くためのラケットなど、生活必需品のほとんどを、森から切り出した木で手作りして暮らしている。過去に2度結婚歴があり、最初の妻はネイティブ・アメリカンのクリー族の女性、2度目の妻はエスキモーのイヌヴィック族の女性だった。

 
 

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犬とトラッパーの関係は力強かった。パノラミックな氷河の川床を、小さな点のように連なる犬ぞりを操る主人公がしだいにクローズアップされる光景を観ると、あっという間に環境地球という問題を意識してしまう。凍てつくロッキーの中で何故彼は、自然と共生しようとするのか、彼の語り口から次第に解けてくる。ここで起こっていることは、アマゾン熱帯雨林の中で生きるヤマノミの姿と同じではないのか。熱帯でも亜寒帯でも同じようなことが起こっていることを知らされた思いである。100分という映像時間の経過をこれからどのように自分の生活に生かしていくのか、前向きに考えさせられる作品である。
(JS)

ニコラス・ヴァニエ(監督・脚本):
1962年生まれ。現代のジャック・ロンドンと称される冒険家。シベリア、カナダのグレート・ノース、アラスカを舞台にした探検にもとづいて、数々の写真集や小説、短編やTV映画を発表。更にそれらは多くの賞を獲得し、確固たる地位を築く。最近では、06年3月19日に犬ぞりでの約8000キロのシベリア横断に成功。世界的に注目を集めた。

       
   


オフィシャルサイト
http://www.kariudo.jp

スタッフ
監督・脚本 ニコラス・ヴァニエ
プロデューサー ジャン=ピエール・ベリー
製作ディレクター ベルトラン・ジェニー
撮影監督 ティエリー・マシャド
演出 ヴァンサン・ステジェー、ピエール・ミショー
音楽 クリシュナ・レビ
動物コーディネート アンドリュー・シンプソン

原題:Le Dernier Trappeur 
提供・配給:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ 
宣伝:ギャガ宣伝[冬]×アルシネテラン 
協力:ポニーキャニオン
2004/フランス・カナダ・ドイツ・スイス・イタリア合作/101分/シネスコ DOLBY SR・DIGITAL/カラー/

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