明日へのチケット
TICKETS

2006年10月28日(土)より渋谷シネ・アミューズ他公開

■story
インスブルック駅。テロ対策の警備のために全ての電車が遅れ、構内には疲れ気味の人々が溢れ騒然とした雰囲気になっていた。やっとローマ行きの列車の出発準備が整い乗車を始めたが、列車内は様々な人種と様々な階級の人々でごった返していた。

□1枚目のチケット---エルマンノ・オルミ監督
  初老の大学教授は、ローマに帰る飛行機が全便欠航のため、仕事相手のオーストリア企業の秘書に便宜を図ってもらい、インスブルックからの列車で帰ることになる。教授は孫息子の誕生パーティーまでにローマに戻れるのだろうかと不安に思っていた。知性と美しさにあふれたその女性は、指定席が全て売り切れている中で教授がずっと座っていられるようにと、食堂車の予約券を2枚とってくれていたのだ。列車の出発を待つ間、二人の会話ははずんでいく。
  車内で一人きりになった教授は、彼女に思いを馳せている自分に気がつく。いつもなら移動時間にもパソコンで仕事を続けていたが、彼女にメールを書いてみようと思いつく。しかし書き出しからどう言葉を繋げていいのか分からず、なかなか文章は進まない。
  現実に戻った教授は、混み合う通路にアルバニア移民らしき家族に目をとめる。母親が幼児にミルクを飲ませようとするが、通りかかった警備の軍人がミルクを蹴散らしてしまう。軍人は謝りもせず、逆に通路からの立ち退きを命令する。その光景を見つめていた教授は、決心したかのように給仕に何かを注文した・・・。

□2枚目のチケット---アッバス・キアロスタミ監督
  翌朝列車はイタリアの小さな駅に停車する。太った中年女性が、息子のような年齢の青年を連れて列車に乗り込む。青年はフィリッポ。兵役義務の一環として、将軍の未亡人の手助けをするよう割り当てられたのだ。今では彼女の傲慢さにうんざりしていた。今日は将軍の一周忌の墓参りに向かう夫人のお供だった。
  夫人は一等車で空席を2つ見つける。自分たちの乗車券は二等車だという青年の意見などお構いなく、女性は有無を言わせずそこに腰を落ち着ける。次の駅から乗車した2人のビジネスマンは、自分たちの席に中年女性が座っているのを見て困惑してしまう。長い議論の末、車掌が呼ばれる。やっと乗車券を確認すると、夫人は席を動かないと言い放った・・・。
 


キャスト
教授:カルロ・デッレ・ピアーネ
秘書:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ

女:シルヴァーナ・ドゥ・サンティス
フィリッポ:フォリポ・トロジャーノ
携帯電話の男:ダニロ・ニグレッリ
女の子1:カロリーナ・ベンベーニャ
女の子2:マルタ・マンジウッカ
赤い服の女:イレーネ・ブフォ

ジェムジー:マーティン・コムストン
フランク:ウィリアム・ルアン
スペースマン:ガリー・メイトランド
アルバニア人一家
       男の子(ベッカム):クライディ・チョーライ
       母親:アイーシェ・ジューリチ
       祖母:サニーイェ・デディヤ
検札係:
       ロベルト・ノビーレ
       マウロ・ピロヴァーノ
女の子たち:
       エウジニア・コンスタンチーニ
       キアラ・ジェンシーニ
       マリア・デ・ロス・アンジェルス・パッリネッロ
       ヴィヴィアナ・ストランベッリ


 


□3枚目のチケット---ケン・ローチ監督
   その頃、列車内のビュッフェでは、スコットランドからやって来たスーパーマーケットの店員仲間である3人、ジェムジーとフランクと“スペースマン”が旅を楽しんでいた。彼らの愛するサッカーチーム、セルティックF.C.が、人生で初めてチャンピオンズリーグの準々決勝に進出するのだ。ローマで行われる歴史的な試合、対A.S.ローマのアウェー戦の入場券と列車の乗車券を買うために少ない給料から3人で積み立てをして、ようやく旅に出たのだ。ビュッフェ車両で職場のスーパーマーケットで仕入れたサンドイッチを食べていると、マンチェスター・ユナイテッドのベッカムのユニフォームを着た少年を見つける。サンドイッチを少し分けてあげると、少年は自分がアルバニアの出身で、ローマに働きにでた父親に会うために家族でやって来たのだと言う。彼らがサッカーに対する愛情を分かち合う仲間になるのに、大した時間はかからなかった。ジェムジーが財布に入れた試合の入場券を少年に誇らしげに見せびらかしていると、通りがかった車掌が床に置いた荷物につまずいて転びそうになり一悶着が起こった。そのあと少年は席に戻って行ったが、持ち帰ったサンドイッチを少年の姉や祖母、母親たちが分け合って食べているのを見た人のいいスペースマンは、まだ残っていたサンドイッチを全部家族にあげてしまった。
  3人は隣の席の女の子たちに話しかけてふざけて騒ぎ、相変わらず旅の興奮を満喫していたが、車掌が検札に来ると雰囲気が一変する。ジェムジーの乗車券だけ見あたらないのだ。ジェムジーはあらゆる場所を探すがどこにもない。フランクは「お前がアルバニアの少年に試合の入場券を見せている時、車掌ともめている隙にあの少年が乗車券を盗んだんじゃないか?」と言い始めた。少年を信じるジェムジー、どっちつかずのスペースマン。長い口論の末に3人は遂にあの一家と対峙することに。彼らの乗車券を確認すると、姉のバッグから消えた乗車券が出てきた。3人が車掌に言いに行こうとすると、姉が彼らを止めに入った・・・。




■3人の名匠による共同長編
ローマへと向かう国際列車を舞台にローチ、キアロスタミ、オルミの3名匠が、偶然乗り合わせた人々の1枚のチケットから始まる、様々な人生の可能性と希望を描く。
エルマンノ・オルミ(78年『木靴の樹』)、アッバス・キアロスタミ(97年『桜桃の味』)、ケン・ローチ(06年『麦の穂をゆらす風』)。全員がカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムド?ルの受賞者。いわゆるオムニバス形式ではなく、同じ舞台背景、重なりあう登場人物で互いの物語につながりを持つ、“共同長編”とでも言うべき1本の作品に創り上げられている。

■イギリスーオーストリアーイタリア    今それぞれの 新たな人生の旅が始まる
ローマへと向かう特急列車に乗り込んだ様々な人種と階級の人々。そこで描かれるのは彼らが手にした1枚の乗車券がもたらす哀しみ、不安、残酷さ、不平等、そしてそれでもなお失われない愛と希望の物語。悪天候のために飛行機をあきらめ、インスブルックから列車でローマに帰るはめになった初老の大学教授は、予期せぬ心のときめきに出会いその思いをきっかけに、これまでの自分なら考えられないようなひとつの行動をとる。何の目的も見つけられずに流されながら生きている青年は、自分自身と真摯に向き合うことでやっと未来へと目を向けるようになる。長い間わがままで自分勝手に生きてきたある中年女性は、人生は誰にも頼らずに一人で歩いて行かなければならないことを思い知らされる。そして夢にまで見たサッカーチャンピオンズ・リーグの試合を観るためにスコットランドのグラスゴーからやって来たセルティック・サポーターの3人の若者たち。彼らもまた自分たちがしっかり世界とつながっていることを知り、限りない未来への可能性を見つけ出す。そして偶然めぐり会った乗客たちは、それぞれの新しい人生の選択と可能性の物語へと旅立ってゆく。


 
 

>>>
3つのエピソードには、わたしたちが忘れようとしているかもしれないか、希薄になりつつある人間の温かみと、それに対するまなざしが感じられます。
これは、3人の監督がこれまで制作してきた作品にながれる共通のモチーフでもあるようです。
権力や傲慢さ、そして無気力の前で、一見、無意味にもみえるこの感覚。登場人物の中に、また観る者の中に、眠っているだけなんだよと、呼び覚まされるかのようです。 そこにある種の共感があるからなのでしょうか、それが、何かのきっかけで奮い立たされます。
それは、わたしたちが、なかなか持ちにくくなっている希望というものを手に入れるためのチケットなのかもしれません。
(JS)


         
   


オフィシャルサイト
http://www.cqn.co.jp/ticket/

スタッフ
共同監督:エルマンノ・オルミ
       アッバス・キアロスタミ
       ケン・ローチ
脚本:エルマンノ・オルミ
       アッバス・キアロスタミ
       ポール・ラヴァティ
プロデューサー: カルロ・クレスト=ディナ
       ババク・カリミ
       ドメニコ・プロカッチ
       レベッカ・オブライエン
撮影監督:ファビオ・オルミ
       マームード・カラリ
       クリス・メンゲス
美術:アレッサンドロ・ヴァヌッチ
衣装:マウリツィオ・バジーレ
音楽:ジョージ・フェントン

2005年/イタリア・イギリス合作/110分/ドルビー・デジタル/1:1.85
原題:TICKETS
配給:シネカノン