赤い鯨と白い蛇

2006年11月25日より岩波ホールにて公開

■story
老境を迎えた雨見保江(香川京子)は、千倉に住む息子夫婦のもとに身を寄せることになった。孫の明美(宮地真緒)をともなって、千倉に向かう途中で「どうしても昔住んでいた家を見にいきたい…」と、館山駅で途中下車する。記憶をたどりながら家に向かう保江。そこは茅葺き屋根の古い民家だった。保江らが家の中へ入って行くと、家の持ち主・光子(浅田美代子)が姿を見せ、この家を取り壊して建て直すために、きのう引っ越したばかりだと話す。
保江の家族は戦時中この家を借りて疎開してきた。終戦後も何年かそこで暮らしたので、保江にとっては青春の思い出がつまった家だった。
光子の娘・里香(坂野真理)が学校から帰ってくる。光子の夫は、三年前に黙って家を出て行方がわからない。

 

■キャスト
香川京子
樹木希林
浅田美代子
宮地真緒
坂野真理
 




光子の夫は、三年前に黙って家を出て行方がわからない。ひととおり家を見せてもらった後、千倉に向かおうと促す明美に、「できれば今日はここに泊まりたい…」と言い出す保江。
保江は、「遠い昔の大切な約束を思い出すためにここに来た」と明美に打ち明ける。そこへ以前、この家を借りていた美土里(樹木希林)がやってくる。
女性たちはいつしか古い知り合いのように打ち解けはじめていた。保江が唐突に「この家には百五十才になる白い蛇が住んでいて、その蛇と話をすると幸せになれる」と言いだす。そんな保江に、美土里は「ぼけちゃったの」と呆れるが、里香が「私、白い蛇、見た」と言い、皆を驚かせる・・・。
 


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“赤い鯨”とは、戦争中、夕陽に輝く潜水艦の姿。当時、館山には海軍航空隊基地があり、特殊潜航艇の基地となり多くの若者たちが出撃していった。悲しい記憶の象徴である。“白い蛇”は古くから家の守り神を表す伝説的な存在。それが保江の行動を促しているかのようである。
古い茅葺きの家は、一つの舞台となって、5人の女性に想いを表す場を与えている。この5人はそれぞれの世代を象徴するような存在。やがて失うであろう記憶の世界に最後の想いをかけて行動しようとする保江、新しい生命を宿そうとしていることに苦悩する明美、夫との関係に結論を出しかねている光子。そこに介入してくる仕事関係にわけあり気味の美土里、そして光子の娘・里香の少女としての目線。女性たちは、それぞれの世代の持つ想いを互いになげかけることで、何かを得、また自分を見つめなおしていく。孤独でしか生きようのない現代人が、出会いをきっかけに静かな希望を見出す。(JS)

 


■スタッフ

監督:せんぼんよしこ
製作総指揮:奥山和由
撮影:柳田裕男
脚本:冨川元文
美術:古谷美樹
音楽:山口岩男

         
     


オフィシャルサイト
http://www.asproject.jp


製作:クリーク・アンド・リバー社 東北新社
配給:東北新社クリエイツ+ティー・オー・ピー
宣伝:ムヴィオラ
2005年/日本/カラー/102分/ヴィスタサイズ/DTS-SR
(C)2005ASプロジェクト