ダーウィンの悪夢
DARWIN’S NIGHTMARE

2006年12/23(土)より、シネマライズにて公開

■ドキュメンタリー
ヴィクトリア湖畔。巨大な魚を運ぶ人や水揚げする漁師たち。この巨大魚が、半世紀ほど前にこの湖に放たれたナイルパーチ。肉食の魚ナイルパーチは湖に元々いた魚たちを餌にして、たいへんな勢いで増えた。そして、淡白な白身で海外への輸出にぴったりだったナイルパーチは“大金になる魚”になった。皆がナイルパーチ漁にむらがり、加工・輸出の一大魚産業が誕生した。

ナイルパーチで仕事をしているのは、漁師や加工工場の人間ばかりではない。最大の輸出先であるEUの国々に魚を空輸するパイロットもそうだ。彼らは旧ソ連地域からやってくる。55トンもの魚を詰めてタンザニアとヨーロッパを頻繁に往復している。そして彼らパイロットを相手に町の女エリザたちは売春で金をかせぐ。

 


 


 




 


ナイルパーチを求めて、農村などからもお金を得ようと多くの人がやってきた。 彼らは湖畔に漁業キャンプをつくった。漁に出てナイルパーチを工場に売って金を稼ぐために。 だがボートのない彼らは、誰もが漁に出られるわけではない。工場の仕事にありつくのも難しい。 彼らの中にしだいに貧困がはびこり始める。同時にキャンプの男たちを目当てに売春をする女たちも増えた。 そこからエイズは広がり、病気で働けなくなる者も多い。漁業キャンプの牧師によれば、毎月10人から15人が死ぬのだと言う。

自然保護の国際会議で、ヴィクトリア湖の自然が壊滅的状況にあることが報告される。 ナイルパーチによって湖の食物連鎖が崩れ、やがてはナイルパーチさえもいなくなる危険もあると。

一方、魚加工工場では不思議なトラックを見かけた。それはナイルパーチの残骸を集めに来たトラックだった。 ナイルパーチ切り身は多くの地元民には高くて手が出せない。 切り身を輸出した残りの頭や骨などを一ケ所に集め、揚げたり焼いたりして売っている。それを地元民は食べる。 残骸の山からはアンモニアガスが噴き出し、そこの仕事で眼球が落ちてしまった女性もいる。

画家のジョナサンが興味深い話を教えてくれた。ヨーロッパからナイルパーチを運ぶためにやってきた飛行機の機内から大量の武器が見つかった。 タンザニア政府はそれを知らなかったが、行き先はアンゴラだった。ジョナサンはその話を新聞やテレビで知ったと言う。
その記事を執筆したジャーナリストのリチャードは、魚を運ぶためにやってくる飛行機にはアフリカの紛争で使われる武器が積んであると言う。 果たしてそれは真実なのだろうか?

魚業研究所の夜警ラファエルが呟く。「戦争があれば金になるのに・・・…皆、戦争を望んでるはずさ」。

魚を運ぶ飛行機の機長・セルゲイが言葉すくなに告白した。かつてアンゴラへ戦車のようなものを運んだことがある――。

そして、魚を積んだ飛行機はヨーロッパや日本へ飛び、魚は私たちの食卓へやってくる……。

 


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ナイルパーチは切り身として主にヨーロッパ・日本へ輸出され、数年前までは“白スズキ”という名前でスーパーでも売られていたという。 現在も、お弁当、給食、レストランなどの白身魚フライによく使われている。この事実を知ってショックだった。 悲惨な映像を目にする機会が増えたが、それらが点と点でつながっていたことを知るとき、われわれはいったい何を思うのだろう。 (JS)

 







■スタッフ

監督・構成:フーベルト・ザウパー
アーティスティック・コラボレーション:サンドール・ライダー、ニック・フリン   
撮影:フーベルト・ザウパー
録音:コスマス・アントニアディス 
編集:デニーズ・ヴィンデフォーヘル 
整音:ヴェロニカ・ラワチ

プロデューサー:
エドワール・モリア
アントニン・スフォボダ
マルティン・フシュラハト
バルバラ・アルベルト
フーベルト・トゥワーン
フーベルト・ザウパー

         
     


オフィシャルサイト
www.darwin-movie.jp

2004年/フランス=オーストリア=ベルギー/英語・ロシア語・スワヒリ語/カラー/35mm/ヴィスタ/112分/ dolby SRD
原題:Darwin’s Nightmare 
配給:ビターズ・エンド