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不都合な真実
An Inconvenient Truth

2007年1月20日(土)TOHOシネマズ六本木ヒルズ他
全国ロードショー

■ドキュメンタリー
地球が、今、最大の危機に瀕している。キリマンジャロの雪は解け、北極の氷は薄くなり、各地にハリケーンや台風などの災害がもたらされる。こうした異変はすべて地球の温暖化が原因といわれる。年々、上がり続ける気温のせいで、地球体系が激変し、植物や動物たちは絶命の危機にさらされる.....。

アメリカの元副大統領アル・ゴアは、温暖化によって引き起こされる数々の問題に関するスライド講演を世界中で開き、地球と人類の危機を訴えてきた。

 


■キャスト
アル・ゴア
 





       


 ゴア自身が問題を強く意識したのは、1960年代後半のこと。環境問題を研究するロジャー・レヴェルの警告に心を動かされた彼は、70年代後半にはこの問題に関する初の議会の聴聞会をまとめる手伝いをした。80年代には各国の首脳たちと話し合いを始め、また、97年には京都議定書など、多くの交渉の場に参加した。
  政治家として、長年、環境問題に取り組んできたが、その運動に突き進んだ本当の動機はとても個人的なものだった。89年に6歳の息子が交通事故に遭い、1ヶ月間、生死の境をさまよった末、奇跡的に命を取りとめた。この時、将来の息子が生きる場所への危機感を強めたという。

さらに追い討ちをかけたのが、2000年の大統領選でのブッシュへの敗北だった。その印象を「打撃だった」と、劇中で素直に告白するゴア。やがて彼は失意から立ち上がり、自分の本当に進むべき道を見出した。
そして、スライド講演を決意し、自分の生の声で人々に温暖化問題を伝える活動を始めたのだ。アメリカだけではなく、ヨーロッパやアジアなどでこれまで1000回以上の講演を行ってきた。
  そこで明かされる驚愕の事実の数々。北極はこの40年間に40%縮小し、今後、50〜70年の間に消滅するといわれている。氷を探して100キロも泳いで溺死した北極グマの悲劇的なレポートも伝えられる。また、数百万におよぶ渡り鳥が温暖化の被害を受け、種の絶滅の割合は過去の記録の1000倍に達しているという。さらにこの四半世紀の間に、鳥インフルエンザやSARSといった奇病が発生。昨年、ニューオリンズを襲ったハリケーン、カトリーナのような大きな自然災害も増えた。環境破壊のせいで、今後、20万人もの難民たちが大移動する、とも言われている。
  多くの政治家たちが耳を貸そうとしない"不都合な真実"。しかし、私たちが日々の暮らしの中で小さな努力を重ねることで、地球を変えていける、とゴアは訴える。それぞれの問題は日常生活の中でつながっており、車の排気ガスを減らしたり、自然エネルギーを取り入れることで、事態は確実に改善されていく。


       
     


       


■アル・ゴア
1976年に下院議員。84年と90年に上院議員、1993年1月にはアメリカの副大統領に就任。在職中はクリントン大統領の経済チームの中心的なメンバーとして知られる。
「地球の掟 文明と環境のバランスを求めて」(翻訳版はダイヤモンド社)を92年に発表し、ベストセラーとなる。
アップル・コンピューターの取締役会のメンバー、グーグル・インクの上級顧問、ミドル・テネシー州立大学の客員教授などを勤める

■監督:デイビス・グッゲンハイム
『セックスと嘘とビデオテープ』(89)のスタッフとして参加。
99年から公立学校の数学の新人教師たちを追ったドキュメンタリー映画 "The First Year"、"Teach"の製作。
ノートン・サイモン博物館用に作られた『ノートン・サイモン:人と彼のアート』、ジョン・F・ケネディ・ライブラリー用の『JFKと捕らわれた子供』などを製作。
劇場映画作品では、学園サスペンス『ゴシップ』(00)で監督、刑事映画『トレーニング・デイ』(01)で製作総指揮。テレビは「エイリアス/二重スパイの女」、「24TWENTY FOUR」、「NYPDブルー」、「ER/緊急救命室」、「サンフランシスコの空の下」に演出で参加。

 










■スタッフ
監督:デイビス・グッゲンハイム
製作総指揮:ジェフ・スコル
製作:ローレンス・ベンダー
製作:スコット・Z・バーンズ
製作:ローリー・デイヴィッド


原題:An Inconvenient Truth/2006年・アメリカ
上映時間:1時間36分/ヴィスタビジョン/ドルビーデジタル
日本語字幕:石田泰子
パラマウント・クラッシックス/UIP映画配給
宣伝会社:メディアボックス

 


           


■オフィシャルサイト

http://www.futsugou.jp

     


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監督のグッゲンハイムは、この作品にかかわる前は、環境問題のレクチャーの映画化など誰が見るだろうと疑問を持っていた。しかし、京都議定書に批准しないアメリカでこのドキュメンタリー作品が異例のヒットをしているという。
環境問題を扱うのは難しい。偽善と真実が見分けにくいという側面もあるし、関心と行動がリンクしないというジレンマもある。今では誰にも身近なこととなっているが、これからどうなるのか、全貌は誰にも捉えられない。
ゴアと環境問題の接点はどこにあったのか知りたかったが、それがこの作品でわかってくる。地球の温暖化を最初に発表した研究者がゴアの恩師であった。アメリカ大陸の一部が水没するという話を昔聞いたことがあったが、ここでは現実味を帯びて伝わってくる。
試写を見たあと、地球環境に関するデータを書店の店頭でもう一度調べてみた。そこには、2100年に水面が60cm上昇するというデータが多かった。この映画の中でいってることと少し違う。無難なデータしか載っていないのか。いったい真実はどこに?
ゴアは、大統領にならなかったことでもっと重要な活動に入れたのかもしれない。常に強い関心を持つことが大切なのか。(JS)