ゴア自身が問題を強く意識したのは、1960年代後半のこと。環境問題を研究するロジャー・レヴェルの警告に心を動かされた彼は、70年代後半にはこの問題に関する初の議会の聴聞会をまとめる手伝いをした。80年代には各国の首脳たちと話し合いを始め、また、97年には京都議定書など、多くの交渉の場に参加した。
政治家として、長年、環境問題に取り組んできたが、その運動に突き進んだ本当の動機はとても個人的なものだった。89年に6歳の息子が交通事故に遭い、1ヶ月間、生死の境をさまよった末、奇跡的に命を取りとめた。この時、将来の息子が生きる場所への危機感を強めたという。
さらに追い討ちをかけたのが、2000年の大統領選でのブッシュへの敗北だった。その印象を「打撃だった」と、劇中で素直に告白するゴア。やがて彼は失意から立ち上がり、自分の本当に進むべき道を見出した。
そして、スライド講演を決意し、自分の生の声で人々に温暖化問題を伝える活動を始めたのだ。アメリカだけではなく、ヨーロッパやアジアなどでこれまで1000回以上の講演を行ってきた。
そこで明かされる驚愕の事実の数々。北極はこの40年間に40%縮小し、今後、50〜70年の間に消滅するといわれている。氷を探して100キロも泳いで溺死した北極グマの悲劇的なレポートも伝えられる。また、数百万におよぶ渡り鳥が温暖化の被害を受け、種の絶滅の割合は過去の記録の1000倍に達しているという。さらにこの四半世紀の間に、鳥インフルエンザやSARSといった奇病が発生。昨年、ニューオリンズを襲ったハリケーン、カトリーナのような大きな自然災害も増えた。環境破壊のせいで、今後、20万人もの難民たちが大移動する、とも言われている。
多くの政治家たちが耳を貸そうとしない"不都合な真実"。しかし、私たちが日々の暮らしの中で小さな努力を重ねることで、地球を変えていける、とゴアは訴える。それぞれの問題は日常生活の中でつながっており、車の排気ガスを減らしたり、自然エネルギーを取り入れることで、事態は確実に改善されていく。