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魔笛
THE MAGIC FLUTE

2007年7月14日より日比谷シャンテシネ、テアトルタイムズスクエア にて全国順次ロードショー


■ストーリー
  第一次世界大戦の塹壕のなか、兵士タミーノが戦場にたちこめる毒ガスに気絶。タミーノを救うため、夜の女王の侍女を務める三人が毒ガスを一掃した。息を吹き返したタミーノは、毒ガスの危険を知らせるカナリアを飼育するパパゲーノを見て、命の恩人と思いこむ。

 侍女たちは夜の女王の娘パミーナの写真をタミーノに見せ、パミーナ救出を依頼。やがて戦車隊を率いる夜の女王が登場し、最愛の娘パミーナを暗黒卿ザラストロに奪われた悲しみを切々と訴える。女王からの贈り物として魔法の笛を渡されたタミーノ、それにチャイムを渡されたパパゲーノは三人の少年の手引きにより、パミーナ救出の旅へ向かう。

 ザラストロの城塞では、部下のモノスタトスがパミーナに乱暴を働こうとしていた。そこへパパゲーノが潜入、お互いの姿に驚いたモノスタトスとパパゲーノはその場を逃げ出してしまう。その後、パパゲーノはパミーナに事情を説明し、夜の女王のもとに戻るよう説得を始める。

 


■キャスト
タミーノ/ジョセフ・カイザー
パミーナ/エイミー・カーソン
パパゲーノ/ベン・デイヴィス
若き日のパパゲーナ/シルヴィア・モイ
ザラストロ/ルネ・パーペ
夜の女王/リューボフ・ペトロヴァ
モノストタス/トム・ランドル
第1の侍女/テゥタ・コッコ
第2の侍女/ルイーズ・カリナン
第3の侍女/キム=マリー・ウッドハウス

 





       

 
一方、城塞に入ったタミーノは、向かい入れた男をザラストロ本人と気づかぬまま、長い問答を交わす。男の話に耳を傾けるうち、タミーノはザラストロが平和を望む指導者であることを知る。パミーナの消息を確認するため、魔法の笛を高らかに吹くタミーノ。これに応えてパパゲーノがチャイムを鳴らすと、モノストタスと兵士たちは浮かれて退散してしまう。

 指導者ザラストロを讃える群衆の歓呼を見て、タミーノはようやくザラストロの正体に気づく。パミーナがザラストロに許しを請うと、ザラストロはこれを快く受け入れる。ザラストロは戦場に"楽園"をもたらすため、タミーノたちに困難な試練を課すことにする。

 無数の白い墓碑が建ち並ぶ共同墓地で、平和への祈りをささげるザラストロと群衆たち。若い娘が得られるとあって、パパゲーノもタミーノの試練に参加を決意した。まずは"沈黙の試練"。従軍看護婦たちが巧みに話しかけるがタミーノは頑なに口を閉ざし、おしゃべりなパパゲーノを制して試練を遂行する。

 一方、風車小屋に幽閉されたパミーナを見張るモノスタトスは、よこしまな感情を露わにする。そこへ復讐心に燃える夜の女王が登場し、パミーナに短剣を渡してザラストロ殺害を強要。様子を伺っていたモノスタトスがパミーナに迫るも、ザラストロが現れてモノスタトスを追放し、パミーナに復讐の無意味さと寛容の心を説く......。

※   ※   ※


       
 




       


■プロダクション・ノートより/ケネス・プラナー監督


オペラ『魔笛』へのアプローチ
そもそもオペラをそんなに知らなかったので、まずはドイツ語の『魔笛』の名盤を聴きこみ、それから英語のリブレットを手がけたスティーブン・フライと話しました。イングマール・ベルイマン監督の映画版(76)も観ましたよ。すばらしい作品だと思いましたが。わたしたたちが意図したものとはかなり違うと感じました。むしろわたしが思い浮かべたのは『ドクトル・ジバゴ』(62)、『アラビアのロレンス』(62)、『レッズ』(81)、など、アドベンチャー映画の要素を持つ壮大なラブストーリーです。

物語の舞台を第一次世界大戦前夜にした理由
『魔笛』の核心には、争い、対立のテーマがあります。それは音楽に関しても明らかです。オペラ自体が敵対する二者の争いを語り、その解決について語っています。つまり、光と闇、憎悪と愛の対立、映画の場合は、戦争と平和の対立です。
なかでも最も激しい争いは、ザラストロと夜の女王の対決です。わたしは、この二人をそれぞれ軍隊のトップにすえ、かつ第一次世界大戦をビジュアル的に再現することで、ザラストロと夜の女王の行為にスケール感を与えることをめざしました。



 
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『魔笛』は、モーツァルトが亡くなる1791年に作曲、ウィーンのヴィーデン劇場にて初演されています。
当時隆盛を極めていたイタリア・オペラと異なり、ウィーンの一般庶民を前提として制作されていて、せりふでストーリーを進行させるジングシュピーゲル(歌芝居)の形式は、後のミュージカルに発展したという説もあります。
 原作では、古代エジプトの神イシスとオシリスを奉る神殿が舞台となっています。全編に流れる象徴的なテーマや、愛と平和の理念は、モーツァルトが、1784年、28歳でに入会したフリーメイソンの儀式や考え方を連想させます。最期の年に制作したということから、モーツァルトが何を残したかったのかを考えさせられる作品です。
 この映画はモーツァルト『魔笛』のプロモーションビデオといった感もあり、オペラになじみのない人でも楽しめるのではないかと思います。 (JS)







■キャスト
ルネ・パーペ(ザラストロ役)
1964年ドレスデン生まれ。世界屈指のバスのひとりとして知られ、「魔笛」ザラストロ役はパーペの当たり役として評価を得ている。ドレスデンで音楽教育を受け、在学中にベルリン国立歌劇場にデビュー。ベルリン国立歌劇場での活動を中心に、バイロイト音楽祭、ザルツブルク音楽祭など、世界有数の音楽祭・歌劇場に頻繁に出演。2006年にはドイツ・グラモフォンと専属契約を結び、クラウディオ・アバド指揮「魔笛」でザラストロ役を録音。2007年秋にはベルリン国立歌劇場来日公演に同行して「トリスタンとイゾルデ」マルケ王役を歌う予定。
オフィシャル・サイト http://www.renepape.com


リューボフ・ペトロヴァ (夜の女王役)
ロシア生まれ。ソプラノ。チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院を卒業後、1995年よりモスクワ・ノーヴァヤ・オペラで「魔笛」夜の女王役、「椿姫」ヴィオレッタ役などを歌う。2001年、代役で「ナクソス島のアリアドネ」のツェルビネッタ役をメトロポリタン歌劇場で歌い、デビューを果たした。メトロポリタン歌劇場では「仮面舞踏会」オスカル役、「ばらの騎士」ゾフィー役、「後宮からの誘拐」ブロンデ役などを歌う。2006年にはグラインドボーン音楽祭に出演するなど活動の場を広げている。

ジョセフ・カイザー(タミーノ役)
若手テノール歌手。2005年度プラシド・ドミンゴ国際オペラ・コンクールに入賞。2004年よりシカゴ・リリック・オペラのメンバーとなり、「フィデリオ」タイトルロール、「アイーダ」ラダメス役などを歌ってきた。これまでにメトロポリタン歌劇場をはじめとする全米主要歌劇場に客演。オペラ出演の他、リサイタル活動も多い。

エイミー・カーソン (パミーナ役)
ブリストルに生まれ、ソルズベリー大聖堂少年少女合唱団に史上最年少メンバー(8歳)として参加。バングラデシュのミッション・スクールで1年間教鞭を執った後、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジで音楽の学位を修得した。在学中は学内オペラで「魔笛」第一の侍女役や「ディドとエネアス」ディド役などを歌ったほか、ピアノを含む4つの楽器をこなし、クラシック以外にもジャズやポップス、さらにはシンガー・ソング・ライターとしても活動している。

ベン・デイヴィス(パパゲーノ役)
本名ベンジャミン・ジェイ・デイヴィス。アイオワ州アメスに生まれ、インディアナポリスのバトラー大学で声楽を学ぶが、大学卒業後は証券業で働いていた。在学時の声楽教師の紹介で「レ・ミゼラブル」のブロードウェイ公演およびツアーに計4年間参加。その後、バズ・ラーマンが演出した「ラ・ボエーム」マルチェロ役をブロードウェイおよびロサンゼルスで歌う。このマルチェロ役でトニー・オナー・オブ・エクセレンス・イン・シアターおよびLAオベーション・アワードを受賞。リドリー・スコットおよびトニー・スコット製作総指揮のTVドラマ「Numbers〜天才数学者の事件ファイル」(05〜)など、テレビ出演も多い。
オフィシャル・サイト http://www.benjaminjaydavis.com

シルヴィア・モイ(若き日のパパゲーナ役)
ノルウェーが生んだ期待のリリック・ソプラノ。ストックホルムのオペラ大学、オスロのノルウェー・アカデミー・オブ・ミュージック、およびロンドンの英国王立音楽大学で学ぶ。演出家ジョナサン・ミラーが手がけた「コジ・ファン・トゥッテ」でもデスピーナ役を歌い、ボーンホルム(デンマーク)、ウィーン、ストックホルムで好評を得た。モーツァルト「見てくれの馬鹿娘」ナンネッタ役でザルツブルク音楽祭デビューを果たし、2006年にも同音楽祭で「フィガロの結婚」スザンナ役を歌う。

トム・ランドル(モノスタトス役)
当初は指揮と作曲を学んでいたが、奨学金を得てテノール歌手を志し、イングリッシュ・ナショナル・オペラで「魔笛」タミーノ役を歌ってデビュー。その後ベルリン・ドイツ・オペラ、グラインドボーン音楽祭、ベルリン国立歌劇場などに立て続けに出演。現代音楽の歌唱にも定評があり、ジョン・アダムス作曲のオペラ「クリングホファーの死」をペニー・ウールコック監督が映画化した『The Death of Klinghoffer』(03)ではテロリストの役で出演している。

テゥタ・コッコ(第一の侍女役)
アルバニア生まれのソプラノ。13歳でイギリスに移住後、チェッタム音楽学校、王立ノーザン音楽大学、マルセイユ国立オペラ歌手研修所で学んだ。これまでに「魔笛」パパゲーナ役、「ラインの黄金」ヴォークリンデ役、「アルジェのイタリア女」エルヴィラ役、「コジ・ファン・トゥッテ」デスピーナ役などを歌い、バロック作品をはじめとする宗教曲も得意とする。2006年にはカーネギーホールでリサイタル・デビューを果たしている。

ルイーズ・カリナン (第二の侍女役)
シドニー生まれのメゾソプラノ。シドニー大学音楽院で音楽教育を、グリフィス大学クイーンズランド音楽院でオペラを専攻した。1998年、オーストラリア人としては史上初めてパリ・オペラ座の若手育成プログラムに参加を認められ、「リゴレット」小姓役でパリ・オペラ座デビュー。これまでにBBC交響楽団やシカゴ交響楽団と共演するなど、コンサート活動も多い。

キム=マリー・ウッドハウス (第三の侍女役)
イギリスのメルトン・モーブレーに生まれたソプラノ。英国王立ウェールズ音楽大学で声楽と演技を学ぶ。1993年にはメアリー・ガーデン声楽コンクールで優勝を果たし、ナショナル・モーツァルト・コンペティションでも準優勝を収めた。オペラ・ノースなど、イギリス国内を中心に活動を続けている。

■監督: ケネス・ブラナー
1960年北アイルランドのベルファスト生まれ。23歳でロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに参加し、 『ヘンリー五世』と『ロミオとジュリエット』に主演。その後、自身の劇団ルネッサンス・シアター・カンパニーを立ち上げ、 精力的に演劇活動を行うかたわら、主演も兼ねた『ヘンリー五世』(89)で映画監督デビュー。英アカデミー賞の監督賞を受賞。 その後『愛と死の間で』(91)、『ピーターズ・フレンズ』(92)、『フランケンシュタイン』(94)を監督。 シェイクスピア作品では、『から騒ぎ』(93)『世にも憂鬱なハムレットたち』(95)『ハムレット』(96)『恋の骨折り損』(99) 『お気に召すまま』(06)を手がけている。 俳優としても、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(02)では、ナルシストのダメ魔法使いのロックハート先生を演じた。


■スタッフ
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
監督・脚本:ケネス・ブラナー
脚色:スティーヴン・フライ
プロデューサー:ピエール=オリビエ・バルデ
ピーター・ムーア財団:ピーター・ムーア
音楽監督/指揮:ジェイムズ・コンロン
演奏:ヨーロッパ室内管弦楽団
製作総指揮:スティーヴン・ライト
撮影監督:ロジャー・ランサー
プロダクションデザイン:ティム・ハーヴェイ

     

 

 

   


■オフィシャルサイト
http://mateki.jp/

2006年/イギリス/2時間19分/原題THE MAGIC FLUTE
配給: 東芝エンタテインメント

(C) THE PETER MOORES FOUNDATION-2006