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ミリキタニの猫
THE CATS OF MIRIKITANI

2007年9月8日(土)、ユーロスペース他にて全国順次ロードショー


■ドキュメンタリー
  ニューヨーク、ソーホー。リンダ・ハッテンドーフが毎日歩く路上に、ジミー・ミリキタニはいた。彼はいつもそこで絵を描いていて、その絵の代金以外は受け取らない。日系人ホームレスだが、施しは受けないのだ。
リンダは、お金を払う代わりにカメラを回すことで彼の絵を得た。
2001年9月11日。崩れ落ちるツインタワーの前で、ジミーは咳をしながらも、ずっと絵を描き続けていた。見かねたリンダは「うちにいらっしゃい」と言い、彼を自宅に受け入れた。

 リンダのアパート。テレビでニュースが流れる。アメリカの報復攻撃が始まった。ジミーは時折「No War!」とつぶやく。彼の描く絵は、ツールレーク収容所、広島原爆ドーム・・・。リンダはジミーと話すうちに、彼が第二次世界大戦中にアメリカ国籍を持ちながら日系人強制収容所に入れられ、アメリカへの抵抗から自ら市民権を捨てた過去を知る。
60年もの長い間、たったひとり戦い続けていたのだ。

 リンダはリサーチを重ね、ジミーの市民権が47年前に回復していたことが明らかになる。
固く閉ざされていたジミーの心は少しずつ解かれていく・・・。

 


■登場人物
ジミー・ツトム・ミリキタニ
ジャニス・ミリキタニ
ロジャー・シモムラ
 






       

 

■プロダクション・ノートより

 1941年、日本の真珠湾攻撃により、アメリカの日系人は強制収容所に入れられた。 アメリカ政府が収容者たちに実施した忠誠テストで、「敵性」と見なされた人々はツールレークに隔離収容された。何千もの人々が、抵抗として米国市民権を放棄した。
 戦争が終わっても何百人もの人々が理由も無く引き続き拘束された。ウェイン・コリンズという弁護士がただ一人、圧力に抵抗したジミーたち約5000人の市民権を回復するために、10年以上も活動を続けた。アメリカで市民権を持たないということは、パスポートも運転免許書も取得できず、公教育も各種社会的給付もうけられない。

 コリンズ弁護士の尽力で1947年の8月までに人々は解放されたが、市民権の回復にはさらに10年もかかった。ジミーは活動を再開しようと、1950年代の初めにニューヨークに流れ着く。料理人としての訓練を受け、ロングアイランドのレストランで働いているときにジャクソン・ポロックとであった。
 ジミーの市民権は1959年にようやく回復され、その通知は発送されていたが、引越しを頻繁に繰り返しっていたので政府からの手紙は彼の手許には届かなかった。やがてジミーはパークアベニューで住み込みの料理人になるが、1980年に雇用主が亡くなると、突然住む場所も職も失ってしまう。それから1年もたたぬうちにグレニッチビレッジのワシントンスクエア公園で暮らすようになり、生活のために絵を売るようになる。2001年、ソーホーで監督のリンダ・ハッテンドーフに出会う。

 


 
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 第二次世界大戦中、米国籍がありながら、日系人強制収容所に収容されたために、抵抗の証として市民権を自ら捨てたミリキタニ。彼の80年間の人生は重い。
 そして、ホームレスの老人を自宅に招きいれる監督のリンダ・ハッテンドーフには感服します。
 それにしても、50年近く前の社会保証データがきちんと整備されていて、ネットで確認できるシステムはすごい。年金問題でゆれている国には遠い話のようです。
 この作品を観たあと、思わず絵を描きたくなってしまいました。そんなパワーをミリキタニは与えてくれます。 (JS)










■監督:リンダ・ハッテンドーフ
オハイオ州シンシナティ生まれ。文学と美術史とメディア論の学位をもつ。10年以上、ニューヨークでドキュメンタリーに携わっており、編集を手がけた多くの作品がPBS、A&E、サンダンス・チャンネルなどで放映され、各種の映画祭で上映されている。この作品が監督デビュー。

製作:マサ・ヨシカワ
ニューヨークを拠点とする製作者、作家、そしてプロデューサーズ・レプレセンタティブとして、映画とテレビの仕事に幅広く携わってきた。TBS及びNHKの作品を多数手がけると同時に、プロダクション・スーパーバイザーあるいはプロダクション・コーディネーターといった様々な形で日米の長編映画に関わっている。

編集:出口景子
1985年、ニューヨーク大学で映画の勉強をするためにニューヨークへ渡り、1987年より編集の仕事をはじめる。編集を担当した最新作はスティーブン・シャインバーグ監督の映画「毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレート」。

■スタッフ
製作・監督・撮影:リンダ・ハッテンドーフ
プロデューサー:マサ・ヨシカワ
編集:出口景子、リンダ・ハッテンドーフ
音楽:ジョエル・グッドマン

     

 

 

   


■オフィシャルサイト
http://www.uplink.co.jp/thecatsofmirikitani

2006年東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門最高賞受賞
2006年トライベッカ映画祭観客賞受賞他

2006年/カラー/74分/原題:THE CATS OF MIRIKITANI
配給:パンドラ