この道は母へとつづく
ITALIANETZ

2007年10月27日(土)より、Bunkamuraル・シネマ他全国順次ロードショー


■ストーリー
ロシア、極寒の大地。見渡す限り雪に囲まれたフィンランドの国境近くの孤児院に、イタリアから一組の夫妻がやってくる。
孤児院の生活は貧しく、彼らがそこから抜け出る唯一の方法は裕福な養父母に引き取られていくこと。

イタリア人夫妻が縁組を希望したのは6歳のワーニャ。選ばれなかった子供たちは羨望と嫉妬の目で見つめ、養子になる年齢を逸した年長の少年少女は寂しさを感じていた。
養子縁組の仲介業者であるマダムと院長の間では、金銭のやり取りがなされていた。貧しい孤児院にとって、子供を養子に出す手数料が大きな収入なのだ。子供を売るような行為に後ろめたさを感じながらも、背に腹は変えられない院長は、マダムに次の養子候補の子供たちを紹介する。

 


■キャスト
ワーニャ/コーリャ・スピリドノフ
マダム/マリヤ・クズネツォーワ
ムーヒンの母/ダーリヤ・レスニコーワ
孤児院長/ユーリイ・イツコーフ
グリーシャ/ニコライ・レウトフ
 





       


今ひとつ実感が沸かないワーニャ。周りは彼の事を“イタリア人”と呼んでからかう。外国人に引き取られるのは臓器移植のためという噂も聞く。
そんなある日、ひとりの母親が孤児院に現れる。捨てた息子を探しに来たというのだ。追い返す院長。帰りのバスを待つ母親に偶然呼び止められたワーニャは、子供の院での生活や彼を引き取った養父母の事を聞かれる。涙ながらに語る彼女の言葉を聞くうち、ワーニャの心に今まで意識しなかった“ほんとうのママ”の存在が芽生える。

その母親が自殺したという報せが孤児院に入り、ワーニャのママへの想いは日増しに強くなっていく。ワーニャは、資料室に出生記録が保存してあることを知るが、文字が読めない。年上の少女イルカに「金と交換で字を教えてあげる」と言われたことを真に受け、院を陰で牛耳る不良グループの金をごまかして盗もうとする。理由を知ったグループのリーダー、カリャーンは、自分が母親に虐待され捨てられた過去を明かし、黙ってイタリアへ行く方が幸せだと薦める。

字の勉強を始めるワーニャ。独学ながらも毎日一生懸命に取り組み、見る見るうちに文章が読めるようになる。そして遂に院長から鍵を盗み、資料室へ入り込むことに成功する。しかし資料に載っていたのは「両親なし」の情報だけ。だが、前にいた別の街の孤児院の住所が分かり、そこへ行けば何か分かるかもしれないと考える・・・

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■プロダクション・ノートより

本作に寄せて
  本作の映画化を思い立ったのは、2000年のことです。ロシアでは、街中で新聞を売ったり、車を洗ったり、どんな卑しい仕事だろうと、それで食いつないでいる子供たちが少なくありません。私はこの問題を映画にしたいと思い、その企画を脚本家のアンドレイ・ロマノフに持ちかけました。そうしたところアンドレイから、ある孤児院の子供に関する新聞記事の話を聞かされました。その子は、自分の本当の母親を捜し出すため、独学で読み書きを学び、孤児院を逃げ出したというのです。この話が、映画の基盤になりました。
  子供たちとの仕事は大変でしたが、非常に面白くもありました。特に、ほとんどの子が実際に孤児院にいる子供たちなので、コミュニケーションの取り方には気を遣いました。この映画製作は真剣な取り組みであることを子供たちにきちんと説明し、大人の俳優と同じように扱いました。彼らは私の要望に十分に応え、最高の演技を見せてくれました。
  本作は愛・自尊心・気高さの物語です。どんな状況であれ、自分の心と人の道に従って行動する限り、その人間は間違いなく勝者です。
  また、混迷する国の物語でもあります。主人公のワーニャのように、あれだけの偉業をやり遂げられる小さな英雄がいるなら、ロシアの前途有望な未来を望み、語ることができるでしょう。
  本作に潜む普遍的なテーマの数々が、ロシアのみならず、他国の観客の皆様にも理解されることを心から望んでやみません。

──アンドレイ・クラフチュク


 
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観る前は、母親をたずねる旅がテーマかなと思ったのですが、そうではありませんでした。これは、ロシアで社会問題化している孤児の増加と外国からの養子斡旋という、国を越えた共通の問題。
誰からも忘れ去られたような極寒の地にある孤児院。そこに集まった子供たち。彼ら は何を見ているのでしょうか。変わることのない日常、夢のような普通の暮らし・・・。主人公ワーニャが選んだのは、暮らし方ではなく本当のママに会うことでした。

ワーニャが友人から「ママができていいな」と言われたことに対し、「本当のママのほうがいい」というシーンがあります。暮らしよりも前に求めるべきことがある。それは「ほんとうの」ことなのだと彼は言っているかのようです。プロダクションノートに、放蕩息子のたとえを監督は持ち出していますが、この作品には現代が失っている大事な部分が底流にあるのだと思います。 (JS)








■監督:アンドレイ・クラフチューク:ANDREI KRAVCHUK
1962年にレニングラード(現サンクトペテルブルグ)で生まれる。レニングラード国立大学で数学と力学の学位を修得し1984年に卒業。1996年にサンクトペテルブルグ映画テレビ大学を卒業。脚本家で監督のユーリイ・フェティングとたびたびコンビを組み、ドキュメンタリーやテレビドラマの監督を始める。本作で劇場映画の監督デビュー。現在は、ボリシェヴィキ政府とのロシア内戦で、白軍の指揮を執ったアレクサンドル・コルチャーク提督(1873〜1920)を描いた映画に取り組んでいる。



■スタッフ
監督:アンドレイ・クラフチューク
製作総指揮:オリガ・アグラフェニーナ
総合プロデューサー:アンドレイ・ゼルツァロフ
制作:ウラジミール・フシド/ウラジミール・ボゴヤヴレンスキー
脚本:アンドレイ・ロマーノフ
撮影:アレクサンドル・プーロフ
編集:タマーラ・リバルチヤ
プロダクションデザイン:ウラジーミル・スヴェトザロフ
音楽:アレクサンドル・クナイフェル
衣装:マリーナ・ニコラエワ
メイクアップアーティスト:オリガ・グラベヌク

     

 

 

   


■オフィシャルサイト
http://www.eiga.com/konomichi

2005年ロシア/フィルモフォンド・レンフィルム・スタジオ&デルフィス・フィルムズ提供/カラー/
1時間39分/ヨーロピアンヴィスタ/ドルビーデジタル
日本語字幕:太田直子
配給:アスミック・エース
(C) 2004 Filmofond Lenfilm Studio