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レンブラントの夜警
Nightwatching

2008年1月12日、新宿テアトルタイムズスクエアにてロードショー


■ストーリー
  1641年、市民が社会を動かすほどの力を持つ共和国オランダ。アムステルダムの邸宅に暮らすレンブラントは、肖像画家としての名声がヨーロッパ中に響きわたり、弟子たちと共にアトリエで次々と舞い込む仕事をこなしていた。
妻のサスキアは、レンブラントの画商をしていたヘンドリック・アイレンブルグの姪で、今では伯父に代わって、着々と富を築いている。ビジネスがらみで始まった結婚だったたが、夫婦仲は円満だった。

 1642年、アムステルダムの市警団から集団肖像画を依頼されるが、レンブラントは乗り気ではなかった。しかし、産後の体調がすぐれないサスキアに、息子のためにもっと富を蓄えたいと言われ、レンブラントはいやいやながら承諾する。

 


■キャスト
レンブラント・ファン・レイン/マーティン・フリーマン  
ヘンドリッケ/エミリー・ホームズ  
サスキア/エヴァ・バーシッスル 
ヘールチェ/ジョディ・メイ 
ヘラルド・ダウ/トビー・ジョーンズ   
フェルディナンド・ボル/ジョナサン・ホームズ
カレル・ファブリティウス/マイケル・テイゲン 
ヘンドリック・アイレンブルグ/ケヴィン・マクナルティ
ティティア・アイレンブルグ/アガタ・ブゼク
 





       

 

 注文主の人となりを理解するためにレンブラントはまず、軍曹のロンバウト・ケンプの身辺に踏み込み、汚らわしい罪の臭いを嗅ぎつける。彼の表の顔は孤児院の院長だったが、裏では子供たちに売春させ、養女にしたマリッケとマリタの姉妹には自らが虐待を加えていたことを知る。

   ある日、隊長のハッセルブルグが右目を撃たれて死んだという報せが入る。訓練中の事故だと発表され、発砲命令を下した副隊長のエグレモントは逃亡、リッペンダムの領主バニング・コックが次期隊長に就任した。さらにバニング・コックは、同性愛の相手だと噂のあるウィレムを副隊長に任命する。一連の動きに陰謀を感じたレンブラントは心を決める。市民を守るどころか、金と欲望のためには殺人も恐れず、弱者を踏み台にする権力者たちを許すわけにはいかない。絵筆で彼らの罪を“告発”しようと決意する。創作意欲に満ち溢れたレンブラントは、それが転落の第1歩だとは思いもしなかった・・・

※   ※   ※

 

       
 




       


■プロダクション・ノートより

フランス・バニング・コック
市警団の隊長。
パーマーランドとイルペンダムの領主で、香料や薬を地中海地域や北アフリカ、中東から輸入し、北欧の料理店や薬屋に売っていた裕福な商人の息子で、社会的地位は高かった。しかしそれは武勇や戦果、代々続く家名によるものではなく、非貴族主義共和国となった新しいオランダで有利な婚姻を続けた結果によるもの。「夜警」が完成すると間もなくアムステルダム市長に選出されている。レンブラントによる中傷も、アムステルダムを牛耳る支配家系としての彼の地位を脅かすことはなかった。
「夜警」に描かれたバニング・コックは、手袋をした右手に他の誰かの手袋を持っている。バニング・コックは、町で最も裕福な義理の兄弟のために、右手の手袋を拾うようなことを強要されたと暗示しているのではないか。

ロンバウト・ケンプ
市警団の軍曹。
代々衣料品商売を続けている家系で、英国中部との関係を持つ。家族の資産によって地位を与えられたが、同時に責任も負わされ、オランダ改革派教会の助祭とアムステルダムの児童及び貧困者救済院長に任命された。しかし彼は、養護施設が児童労働及び児童買春に利用される環境を作ったとして告発されている。彼は在院児で異母姉妹と見られるマリタとマリッケを養子として引き取った。この2人が「夜警」の女性モデルであると考えられている。レンブラントが彼女たちを作品に盛り込んだのは、登場人物たちのモラルの低さに関する告発の一環である。
レンブラントはケンプにバニング・コックと同様の黒い衣装を着せているが、当時の改革派教会助祭の伝統的な服装だったと思われる。マスケット銃兵に何かを指示しているようだが、それは裏切り行為でもあり、顔をそらしながらも殺人謀議の首謀者を指し示している。

マリタ
ケンプの養女。
金髪と右耳、青いドレスが一際目立つ少女。彼女は光を浴びながら、腹違いの姉妹マリッケと連れ立って、人ごみに逆らうように走っていく。
マリタが暮らすケンプの養護施設は、レンブラントの屋敷から屋根続きだった。ケンプがマリタとマリッケを養子にしたことを、レンブラントは明らかに非難している。
本人の強い要望で、レンブラントはマリタの顔を隠すことにした。彼女は煮えたぎる熱湯を被り、顔に火傷を負っていたのである。レンブラントは熱湯の入った壷をマリッケに持たせた。
マリタは売春を余儀なくされた。後にその火傷跡を隠すために仮面をつけるようになった彼女は、1644年、メアリー・スチュアートに伴なわれ英国王室の財宝をアムステルダムへ質入にやってきた廷臣らに引き取られた。

マリッケ
ケンプの養女。
マリッケこそが、「夜警」の基本的精神であるとも言われている。市警団の紋章にも描かれている爪の鋭いニワトリの役割を彼女が担っている。彼女が腰から下げている膨らんだ袋は市警団に与えられた援助金を、抱えている容器は市警団の慈愛を象徴していると言われる。
  レンブラントのテーマは、告発である。彼女が人々の流れに逆らいながら存在するのは、レンブラントが彼女の出生と市警団との不正な繋がりについて知っていることを知らしめるためだった。抑制されることもなく自ら公表するかのような性欲の象徴で作品を満たすことで、本質的には商品として扱われる彼女と彼らとの関係を表している。その事実に光を当てて強調し、モラルの崩壊についての疑惑を告発しようとした。



 
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レンブラントの夜警をモチーフに、モデルとなった人々の実態を暴こうとしています。レンブラントがなぜ、晩年、経済的に厳しかったのか、この作品を観ると納得できます。 (JS)








■ピーター・グリーナウェイ(脚本/監督)
1942年、ウェールズ生まれ。ロンドンに学ぶ。現在はアムステルダム在住。画家として4年間の教育を受けた後、66年、短編『Train』で映画製作を始める。長編劇映画第1作は、『英国式庭園殺人事件』(82)。『ZOO』(85)、『建築家の腹』(87)、『数に溺れて』(88)、『コックと泥棒、その妻と愛人』(89)、『プロスペローの本』(91)、『ベイビー・オブ・マコン』(93)、『ピーター・グリーナウェイの枕草子』(96)などを製作。今までに12本の長編作品と50本の短編やドキュメンタリーを監督。
ベニスのPALAZZO FORTUNYを始め、バルセロナのミロ美術館、ロッテルダムのボイマンス・ファン・ベーニンゲン博物館、パリのルーヴル美術館などで行ったインスタレーションの制作やキュレーターの仕事でも知られている。本の執筆活動や、舞台やオペラの脚本も手がけている。



■スタッフ
脚本・監督:ピーター・グリーナウェイ 
製作総指揮:グジェゴシュ・ハイダロヴィッチ  
  リンダ・ジェームズ
  ポール・トライビッツ
  ジェイミー・カーマイケル 
  ラリー・シュガー
  アソシエイト・プロデューサー:キム・アーノット
製作:キース・カサンダー
音楽:ヴウォテック・パヴリク 
    ジョヴァンニ・ソリーマ    
撮影監督:レイニエ・ファン・ブルメーレン 
編集:カレン・ポーター 
キャスティング:タニア・ポレンタルッティ
ヴェロニカ・ミニョン 
コリン・クラーク
ピーター・ウードリッジ
美術:マーティン・ピエスルマ 
衣装:ヤグナ・ヤンカ
マリット・ファン・テル・ブルグ

     

 

 

   


■オフィシャルサイト
http://eiga.com/official/nightwatching

(C)Nightwatching B.V 2007

第64回 ヴェネチア国際映画祭コンペ部門出品作品 ミンモ・ロテッラ賞受賞

原題:Nightwatching
2007年/カナダ・フランス・ドイツ・ポーランド・オランダ・イギリス合作映画/
35mm/カラー /スコープサイズ/ドルビー・デジタル/139分
配給:東京テアトル/ムービーアイ