■プロダクション・ノートより
インタビュー:ジャン=ピエール・アメリス 監督
子供を主人公にした映画を撮った理由を教えてください
「子供の視点を見つめ直すというのが、今回のテーマでした。大人の方には自分の子供時代を思い起こしてもらい、子供たちにはヒロインに自分自身を重ね合わせ、感情移入して欲しいと思いました」
原作はアンヌ・ヴィアゼムスキー の小説ですが、どう脚色しましたか?
「原作を何度も読み返し、湧き上がってきたインスピレーションを大切にしました。その上で小説にいくつか独自の要素を加えています。それは大きく3つあり、両親の不仲、犬の存在、そしてエピローグの屋根のシーンです。
私にとって最も重要な要素である、“子供の頃に感じる恐怖心”については、アンヌが小説で見事に表現してくれていました。
小説というものは、そこに書かれているものをそのまま映画化するのではなく、根底にあるテーマを読みとって咀嚼しつつ、同じテーマを表現するのが大事だと思います。
アンヌは、ゴダール監督と結婚していたこともあり、映画を知り尽くしている方。私の選択に全面的な信頼をおいてくれて、書き換えた部分もすべて受け入れ、評価してくれました」
映画化で気を配った点は?
「僕はこの作品で長編6作目になるんですが、これまでドキュメンタリータッチの映画を撮ることが多かったんです。今回は、子供時代を表現するために、美術にかなりこだわりました。テーマカラーは、赤と緑です。
ジャック・ドゥミの『ロバと女王』に出てくる小屋の雰囲気を参考にしたり、ヒッチコック『レベッカ』にインスピレーションを受けたりしています。
美術はトリュフォー映画で知られるジャン=ピエール・コユ・スベルコです。不安と期待が入り混じった雰囲気をうまくかもし出してくれたと思います」
作品が完成した気持ちをお聞かせください。
「まなざしにいろいろな感情を秘めた主人公のベティは、人と出会い、冒険をし、さまざまな問題を切り抜けて成長していきます。
フランスでいくつかの学校で上映する機会があったのですが、子供たちは、自分たちの感じる孤独や不安が、自分だけのものじゃないとわかったみたいです。この映画を見た親子が対話するようになったという話を聞き、うれしく思っています。子供にも、大人にもぜひ見ていただきたい作品です」