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カティンの森
KATYN

2009年12月5日(土)より、岩波ホールほか全国にて順次公開


■ストーリー
 1939年9月17日、ドイツ軍に西から追われる人々と、ソ連軍に東から追われる人々が、ポーランド東部ブク川の橋の上で出くわした。ドイツ軍に追われる人の中には夫のアンジェイ大尉を探しに来たアンナと娘のニカ、ソ連軍に追われる人の中には大将夫人のルジャがいた。アンナとニカは川向こうの野戦病院へ向かう。
 
  アンジェイや友人のイェジら将校たちは、ソ連軍の捕虜になっていた。妻と娘の目の前で、彼らは軍用列車に乗せられ、東へと運ばれていく。アンナはクラクフに戻ろうとするが国境を越える許可がおりない。

 11月、アンジェイの父ヤンを始めとするクラクフのヤギェロン大学教授らがドイツ軍に逮捕され、ドイツのザクセンハウゼン収容所に送られた。
 
  クリスマス・イヴ。大将家ではポーランド伝統のクリスマス・ディナーの席にルジャ夫人がつき、娘のエヴァが庭で一番星を待っている。同じ時刻、コジェルスク収容所に閉じ込められている将校たちも星が見えるのを待っていた。

 


■キャスト
マヤ・オスタシェフスカ
アルトゥル・ジミイェフスキ
ヴィクトリャ・ゴンシェフスカ
マヤ・コモロフスカ
ヴワディスワフ・コヴァルスキ
アンジェイ・ヒラ
ダヌタ・ステンカ
ヤン・エングレルト
アグニェシュカ・グリンスカ
マグダレナ・チェレツカ
パヴェウ・マワシンスキ
アグニェシュカ・カヴョルスカ
アントニ・パヴリツキ
クリスティナ・ザフファトヴィチ
 




       

 

 1940年春、国境近くの町でアンナとニカはロシア人少佐の家にかくまわれていたが、クラクフの義母の元へ戻る。義父ヤン教授死亡の報が届く中、アンジェイの生存を信じる母、妻、娘の3人は帰りを待ち続ける。

 その頃、収容所で発熱したアンジェイは、イェジから借りたセーターを着て、大将、空軍中尉ピョトルらと共に別の収容所に移送される。イェジはその場に残された。
  1943年4月、ドイツは一時的に占領したカティン(ソ連領)で、“虐殺された多数のポーランド人将校の遺体を発見”と発表した。「クラクフ報知」に載った犠牲者のリストに大将とイェジの名はあったが、アンジェイの名はなかった。大将夫人はドイツ総督府に呼び出され、遺品の軍功労賞を返される。そしてドイツがカティンで撮影した記録映画を見せられた・・・・


※   ※   ※

 

       
 






       


■プロダクション・ノートより


本作はワイダ監督自身の両親に捧げられている。
父ヤクプ・ワイダ(1900-1940)は1939年9月戦役でソ連捕虜となり、スタロビェルスク収容所に抑留され、ハリコフ近郊ピャチハトキで虐殺された。カティン犠牲者リストには「カロル・ワイダ中尉」の名があり、生年月日も父と一致していた。名が誤記されていたため、母アニェラ・ワイダ(1901-1950)は死去するまで、父が無事生還するとの希望を待ち続けた。
ワイダ監督は1957年、カンヌ映画祭で『地下水道』を上映するためにフランスを訪れた際、アンでルス将軍の序文つき「カティン事件」資料集を読み、初めて事件の真相を知った。それから、映画完成までに半世紀を要した。
「東欧革命」(1989-1990)で社会主義から資本主義に体制が変換するまで、ソ連の犯罪と虚偽を暴露する映画の製作は問題外だった。ワイダは1990年代半ばから、ライフワークとして「カティンの森虐殺事件」映画化を切望した。それから完成までに17年の歳月が必要だった。

・・・こうして、事件に関わった個人をめぐるストーリーを物語ることと、これまで映画という「芸術的な形」を与えられたことのない歴史的真実を、被害国、加害国、そして世界中の人々に知らせることを同時に実現した作品が完成した。その根底にはワイダ監督の次のような芸術観、歴史観がある。

芸術――「私が墓参りに行くのは、死者たちと対話を交わすためです。死者の存在を身近に感じるためです。そうしない限り、彼らは立ち去りません。いつまでも私たちに不安をかきたてるのです。過去と親しむこと、それ以外に有意義な未来へ至る道はありません」

歴史――「歴史認識を持たない社会は、人の集合にすぎません。人の集合はその土地から追い出されるかもしれないし、民族としての存在をやめるかもしれません。歴史がわたしたちを結び付けてきたのです。今日、歴史の果たしている役割は以前よりずっと小さくなっています。人間の意識に歴史が占める場所を取り戻すために戦わなくてはならないのです」


 

 









■監督:アンジェイ・ワイダ
1926年ポーランド、スヴァウキ生まれ。第2次世界大戦中には対独レジスタンス運動に参加。戦後、クラクフ美術大学に入学した後、ウッチ映画大学に転学し卒業。1954年、『世代』で長編映画監督デビュー。1957年『地下水道』でカンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞。1981年『鉄の男』でカンヌ国際映画祭パルムドール受賞。

主な長編劇映画作品
『世代』(54)
『地下水道』(56)
『灰とダイヤモンド』(58)
『夜の終わりに』(61)
『すべて売り物』(69)
『白樺の林』(70)
『婚礼』(73)
『約束の大地』(75)
『大理石の男』(76)
『ヴィルコの娘たち』(79)
『鉄の男』(81 )
『ダントン』(82 )
『愛の記録』(86)
『悪霊』(88)
『コルチャック先生』(90)
『鷲の指輪』(92)
『聖週間』(95)
『パン・タデウシュ物語』(99)
『仕返し』(02)
『カティンの森』(07)
『菖蒲』(08)



■スタッフ
監督:アンジェイ・ワイダ
原作:アンジェイ・ムラルチク
脚本:アンジェイ・ワイダ、ヴワディスワフ・パシコフスキ、プシェムィスワフ・ノヴァコフスキ
撮影:パヴェウ・エデルマン
音楽:クシシュトフ・ペンデレツキ
美術:マグダレナ・ディポント
衣装:マグダレナ・ビェドジツカ

     

 

 

   


■オフィシャルサイト
http://www.katyn-movie.com

原題:KATYÑ
2007年/ポーランド映画 /2時間2分/R-15 /シネスコ
字幕翻訳:久山宏一
配給:アルバトロス・フィルム