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抱擁のかけら
Los Abrazos Rotos

2010年2月6日より新宿ピカデリー、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて公開


■ストーリー
 2008年、マドリード。脚本家のハリー・ケインは、ある事件をきっかけに、名前を変えて違う人生を生きている。
  14年前、彼は本名のマテオ・ブランコを名乗り、映画監督として活躍していた。その事件で視力を失った彼は、もっと大切なものを同時に失くしたことを、心の奥深くに封印した。
  すべての事情を知るエージェントのジュディット・ガルシアと、彼女の息子のディエゴの助けを借りて、ハリーは仕事も私生活も何不自由ない日々を送っていた。
  ある日、ライ・Xと名乗る男が現れ、自分の監督作の脚本をハリーに依頼する。彼が望むのは、「父の記憶に復讐する息子の物語」。自分向きではないと断るハリーは、その男が誰かを思い出していた。記憶から抹殺した男、エルネスト・マルテルの息子だ。
  ハリーの過去に興味を抱くディエゴに求められるまま、ハリーはマテオ時代の物語を語り始める。それは、男女の愛の物語だった。

 


■キャスト
レナ:ペネロペ・クルス 
マテオ・ブランコ、ハリー・ケイン:ルイス・オマール 
ジュディット・ガルシア:ブランカ・ポルティージョ
エルネスト・マルテル:ホセ・ルイス・ゴメス
ライ・X:ルーベン・オカンディアノ
ディエゴ:タマル・ノバス
 





       

 

 1994年、マドリード。初めて会った時からマテオは、その女が何者なのか知っていた。彼女の名前はレナ、有り余る富と絶大な権力を誇る実業家エルネスト・マルテルの愛人だ。何もする必要のない退屈な日々の中でレナは、一度は諦めた、女優になる夢を追いかける。新進監督のマテオが、新作のコメディ「謎の鞄と女たち」を撮ると聞きつけたレナは、オーディションに申し込む。

 彼女をひと目見た瞬間、マテオは心を奪われ、素人同然の彼女を主役に抜擢する。レナもまた、才能に輝くマテオに惹きつけられる。二人が恋に落ちるのに、時間はかからなかった。
  エルネストは、映画への出資を申し出てプロデューサーになり、息子のエルネストJr.を撮影現場に送り込む。Jr.はメイキングを撮るという建前でカメラを回すが、それは父の命令によるレナの監視だった。強く激しい二人の愛は、もはや隠すことはできない。離れていくレナの心を、力で繋ぎ止めようとするエルネスト。二人の関係を嫉妬と羨望で見つめるジュディット。父の望み以上に、執拗にレナを追いかけるJr.。
  それぞれの感情が渦巻くなか撮影は終了、レナとマテオは、カナリア諸島のランサロテ島へ逃避行を遂げる。しかし、マドリードでは裏切りと復讐が始まっていた・・・。


※   ※   ※

 

       
 






       


■プロダクション・ノートより

本作の主人公たちは、「謎の鞄と女たち」というコメディ映画を撮影している。マテオが監督、レナが主人公、ジュディットがプロダクション・マネージャー、そしてレナの愛人エルネストがプロデューサーだ。さらにエルネストJr.が“メイキング”ビデオを担当している。
私はずっと、“メイキング映像を通して見えてくる物語”を描く映画を作りたいと考えていた。メイキング映像は、映画製作の裏側を明らかにするばかりでなく、それを製作する人間たちの秘密をも暴き出す。つまり、秘密の語り手としての役割を担っているのだ。私はフィクションをうまく料理して組み合わせ、架空の中の、さらに架空の物語というものを作りたかった。

この作品の特徴として、“ダブル”というテーマがある。この“ダブル”は、“両義性”や“二重”という意味ではなく、“重複”“繰り返し”という意味である。 たとえば、エルネストJr.は父親の言動をそっくり真似している。Jr.は、本当はゲイなのに、父親と同じく2度結婚している。彼が父親を嫌ったように、自分のことを嫌う二人の子供がいる。親子の関係は、“繰り返される”のだ。
このキャラクター設定は、ヘミングウェイとその息子グレゴリーの関係を参考にしている。グレゴリーは少年時代、女の子のような少年だったが、のちに父親以上に酒を飲み、巨大なゾウを狩り、子供を作る。そして有名な父親が死んで15年後、ほとんど60歳になろうとするときに性転換手術を受けた。

本作の男性主人公には、“二つ”の名前がある。マテオは自分をハリー・ケインと名乗るが、それは自分自身からの逃避である。盲目となって監督をできなくなり、愛する女性を失った彼にとって、現実は耐え難い。“誰かになる”か“誰かを演じる”ことでのみ、生きることができる。自分を偽るしかないのだ。
ペネロペ・クルスも、本作で“二つ”のキャラクターを演じている。レナは、あまりに美しく、あまりに貧しいがゆえに、大物実業家エルネストの毒気に満ちた気前のよさに抵抗することができない。そして、レナが演じる映画「謎の鞄と女たち」の主人公であるピナは、彼女とは対照的な人物である。


 

 









■監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
1949年、ラ・マンチャ州生まれ。17歳で家を出て、映画を学ぶためにマドリードに移るが、フランコ政権の閉鎖により、公的な映画学校に入学するのは不可能となる。71年にスペインの電電公社に就職し、初めてスーパー8mmカメラを購入する。そこで管理スタッフとして12年間働く。様々な反体制派の雑誌に記事を書き、パロディ・パンクロック・グループ“アルモドバル&マクナマラ”のメンバーであった。
80年に予算ゼロの映画『Pepi, Luci, Bom』を監督。86年、製作会社エル・デセオSAを弟のアグスティンと共に設立。二人が手がけた初めての作品が『欲望の法則』(87)。
88年、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』で世界的な注目を浴びる。『オール・アバウト・マイ・マザー』(98)で、米アカデミー賞外国語映画賞を獲得。3年後、『トーク・トゥ・ハー』(02)は、米アカデミー賞最優秀脚本賞のほか、世界中で多くの賞を獲得。
2004年、『バッド・エデュケーション』がカンヌ国際映画祭のオープニング作品に選出される。
06年、アストゥリアス皇太子賞の芸術部門賞を授与される。同年、『ボルベール<帰郷>』をカンヌ国際映画祭コンペティションに出品し、最優秀脚本賞とペネロペ・クルスを筆頭に出演した6名の女優全員が最優秀女優賞に輝いた。この作品は、ヨーロッパ映画賞の5つの賞、ゴヤ賞の5つの賞、国際映画批評家協会賞、全米映画批評会議賞、その他72の各賞を獲得。


■スタッフ
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
撮影監督:ロドリゴ・プリエト
音楽:アルベルト・イグレシアス
編集:ホセ・サルセド
製作:エステル・ガルシア
製作総指揮:アグスティン・アルモドバル

     

 

 

   


■オフィシャルサイト
http://www.houyou-movie.com/

(C)EL DESEO,D.A.,S.L.U. M-2535-2009

2009年/スペイン/スペイン語/128分/カラー/シネスコ
原題:Los Abrazos Rotos
英題:BROKEN EMBRACES)
日本語字幕: 松浦美奈
配給:松竹