home
home

 

約束の葡萄畑
―あるワイン醸造家の物語

The Vintner’s Luck

2010年10月、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー


■ストーリー
 1808年、ナポレオン統治下のフランス・ブルゴーニュ地方。葡萄の採り入れが行われていた。ソブランは、採り入れの手伝いにやって来ていた村娘のセレストと恋に落ちるが、彼女の父親は精神に異常を来しており、ソブランの父親はふたりの交際を禁じた。

 ワインの仕込みが始まった。伯爵のワイナリーで、ソブランは、ヴリー伯爵に自身を売り込むが一笑に付されてしまう。落胆し、夜の葡萄畑をさまよう彼の前に、ひとりの天使ザスが現れる。彼は自身の思いの丈をザスに打ち明け、それに対しザスは、人生と愛についての助言をソブランに与え、1年後、彼の結婚を祝福するために戻ってくると約束する。その言葉に勇気を得たソブランは、セレストと結婚、やがて彼女は最初の子どもサビーヌを身ごもる。

 


■キャスト
ソブラン・ジョドー:ジェレミー・レニエ
天使ザス:ギャスパー・ウリエル
オーロラ・ド・ヴァルデー:ヴェラ・ファーミガ
セレスト:ケイシャ・キャッスル=ヒューズ
ヴリー伯爵:パトリス・ヴァロタ
 




       

 

 1年が経ち、ザスと再会したソブランは、ザスの庭の葡萄樹を与えられる。その見返りは、毎年、同じ夜、同じ場所で彼と会うこと。ザスは葡萄を育てる土壌=テロワールの大切さと、ワイン造りの奥義をソブランに語った。
  その翌日、ソブランは家の近くの痩せた土地を開墾し、葡萄樹を植え始める。資金を得るため、ナポレオン軍の遠征に参加することにした彼は、真冬のモスクワで本隊と離れ、九死に一生を得る。数年の月日が流れ、家に帰ったが葡萄畑は荒れ果てていた。ザスを、ソブランは責めたが、ザスは、最高のワインを造るためには、歓びも悲しみも苦しみも、つまりは人生のすべてが必要になるのだと諭す。

 再び葡萄づくりに精を出し、ソブランの最初のワインが出来上がった。1815年のヴィンテージをもつ彼のワインは、ヴリー伯爵も認めるところとなり、彼の姪でパリから戻ってきた男爵夫人のオーロラ・ド・ヴァルデーも彼のことを一目置くようになる。その一方、ソブランの生活は安定しなかった。ワイン造りにかける野心が、彼の生活を苦しめた。

 やがてヴリー伯爵が亡くなり、ソブランは、ワイナリーを引き継いだオーロラよりチーフ醸造家として迎え入れられる・・・


※   ※   ※

 

       
 






       


■プロダクション・ノートより

ニキ・カーロ監督インタビュー

Q:映画化するにあたって気をつけていたことは?
有名な原作を映画化するのはとても難しい。原作から人間の物語というところを抽出することが私の最初のアイディアでした。人間であること、そして人間性とは?というところに。だからといって宗教的な観点ではなく、あくまでも大地に根ざした人間という意味で、オーガニックなものを目指しました。そこから、生きていることの喜びや痛みを描ければと思ったんです。ソブランのワイン製造者としての成功や挫折、喪失もそうです。

Q:どうやってファンタジーとリアリティのバランスを取ったのでしょうか。
できるかぎり自然に物語を運ぶことを心がけました。天使の羽根はCGでも現すことができますが、あえて触れることのできる羽根を作りました。だってあの時代にCG技術なんてものはなかったはずだから! 子供たちの目線に昆虫や鳥が自然に入ってくるように、天使が本当に側にいるように感じて欲しかったのです。

Q:天使は何の比喩になっているのでしょうか?
全ての人のなかに天使に関する異なったイメージがあるでしょう。天使はソブランの魂であり、インスピレーションと自信を与えました。それと同時に、天使はソブランの痛みにも影響を与えています。そして映画の最後には、ソブランの心の平和に影響を与えます。セレストがソブランの人生のフィジカルな面ならば、天使はスピリチュアルな部分を担っていたと言えるでしょう。その2つが影響し合い、人生というビジネスを生きるバランスを保っているのです。


フィロキセラ
フィロキセラとは、ブドウネアブラムシという葡萄樹の根に寄生して養分を吸い取り、やがて木を枯らしてしまう、葡萄樹にとっての最大の天敵。19世紀初頭、新大陸アメリカから輸入した葡萄の苗木にくっついてヨーロッパに広まり、葡萄農家に壊滅的な被害をもたらした。なかでもブルゴーニュ地方は大きな被害を受け、当時、育てられていた葡萄樹はほぼ全滅してしまう。
本作中、ソブランが葡萄の葉が変色しているのに気づき、畑の葡萄樹を根こそぎ燃やしてしまうシーンが登場するが、とくに説明はないものの、フィロキセラ禍に遭ったものと思われる。いったんフィロキセラにやられると、根を冒されてしまうため焼却するほかない。そして、フィロキセラに対する耐性をもつ新大陸の葡萄樹を台木として、そこにピノ・ノワールなどのヨーロッパ原産の葡萄樹を接ぎ木することによってフィロキセラを無害化し、土地に根ざした葡萄を育てる。本作中では、その様子がていねいに描かれてゆく。

(プレス資料より)

 

 









■監督:ニキ・カーロ
1966年、ニュージーランド、ウェリントンに生まれる。
オークランド大学のイーラム・スクール・オブ・ファインアーツで現代美術を学ぶ。オーストラリアのメルボルンにあるスウィンバーン映画・テレビ専門学校で脚本と演出を学ぶ。
92年、『The Summer the Queen Came』はニュージーランド映画・テレビ賞のテレビ部門の脚本賞と監督賞にノミネートされる。94年には短編『Sure to Rise』がカンヌ映画祭の短編部門に招待され、96年にはドキュメンタリー作品『Footage』がヴェネツィア映画祭で上映される。

98年、ピーター・ウェルズの短編小説を題材に、自ら脚本を書いた長編『Memory & Desire』を発表。カンヌ映画祭の批評家週間に出品されて注目を集める。
02年、『クジラの島の少女』を発表。ケイシャ・キャッスル=ヒューズがアカデミー賞主演女優賞ノミネートされたほか、インディペンデント・スピリッツ賞の外国映画賞、サンダンス映画祭の観客賞、ロッテルダム国際映画祭の観客賞、ニュージーランド映画・テレビ賞の脚本賞と監督賞などを受賞。
05年に、鉱山で働く女性がセクシャル・ハラスメントに対する勝利を勝ち取るまでを描いた『スタンドアップ』を監督。本作は長編第4作となる。


■スタッフ
監督:ニキ・カーロ
原作:エリザベス・ノックス
脚本:ニキ・カーロ、ジョーン・シェッケル
製作:ロビン・レイン、パスカル・ジュドルヴィチ、ルディ・ボーケン、ローリー・パーカー、ニキ・カーロ
撮影監督:ドゥニ・ルノワール (AFC, ASC)
美術:グラント・メイジャー
編集:デイヴィッド・コウルソン
音楽:アントニオ・ピント
衣装:ベアトリス・アルナ・パストール
メイク:デニース・カム

     

 

 

   


■オフィシャルサイト
www.yakusoku-wine.com

(C)2009Ascension Film Kortex Acajou Films

原題:The Vintner’s Luck
2009/ニュージーランド・フランス合作/英語/
シネスコ/126分/PG-12
配給:東北新社