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サラエボ、希望の街角
ON THE PATH

2011年2月19日(土)岩波ホールほか全国順次ロードショー


■ストーリー
 サラエボのアパートメントで同棲生活を送るルナとアマルは、結婚を前提に交際している若いカップル。キャビンアテンダントとして空を飛び回るルナは快活な女性で、一刻も早くアマルとの子供を授かることを望んでいる。
  空港の管制室に勤めるアマルとは心から愛し合っているが、彼が時折アルコールに溺れ、夜遊びではめを外しすぎることが気がかりだった。
  そんなある日、アマルが勤務中に酒を飲んでいることが発覚し、社内の機密委員会から6ヶ月間の停職処分と禁酒セラピーを受けることを言い渡される。ところがアマルは、セラピーへの参加を頑なに拒否。この一件でショックを受けたルナは、担当医からこの先妊娠する見込みが乏しいので、人工授精を考えてはどうかと告げられ、更なる悩みの種を抱えてしまう。
  ボスニア紛争で両親を亡くしたルナは、独り暮らしをしている祖母の家に立ち寄ってケーキ作りを手伝い、「私を訪ねてくれるのはお前だけ。お前にはアッラーの恩寵があるよ」と優しく慰められるのだった。

 


■キャスト
ズリンカ・ツヴィテシッチ
レオン・ルチェフ
ミリャナ・カラノヴィッチ
エルミン・ブラヴォ
マリヤ・ケーン
ニナ・ヴィオリッチ
セバスチャン・カヴァーツァ
イズディン・バイロヴィッチ
ルナ・ミヨヴィッチ
 




       

 

 そんなルナを驚かせたのは、停職で時間を持て余していたアマルが「仕事を見つけた」と言い出したことだった。子供向けのパソコン教室の先生だというその仕事が、バフリヤという男からの紹介だと聞いたルナは一抹の不安を覚える。
  アマルの戦友であるバフリアは、イスラム原理主義の教徒で、数日前に「すまないが女性とは握手できない」とルナに言い放った人物だった。
  仕事場のヤブラニッツァ湖がサラエボから遠く離れていたことが気がかりだったが、アマルは「断って。私を置いては絶対に行かせない」というルナの懇願にも耳をかさず、「数日で帰ってくる」と言い残してアパートメントを立ち去ってしまう。
  ルナのやな予感は的中した。一時は音信不通となり、何度もかけて繋がったアマルの携帯に出たのは別の教徒で、ルナは自ら現地に向かうことを決意する・・・

※   ※   ※

 

       
 






       


■プロダクション・ノートより

監督・脚本:ヤスミラ・ジュバニッチ インタビュー

英題「On the Patch」はオリジナルタイトル「Na Putu」の直訳です。ボスニア語で何かに向かう途中にいるという意味です。英語でも同じですが何かを選択するにあったり、ゴールにたどり着こうとしている精神的な意味での自分探しという意味もあります。カップルとしてルナとアマルはお互い愛し合い、2人で仲むつまじく人生というPath(道)を歩んでいました。しかし彼らの道は別れてしまい、決断の時がやってきます。また、NaPutuというのは女性が妊娠した時にも使われ、赤ちゃんが生まれてくる過程にいる(もうすぐ生まれてくる)という意味です。

表面ではとても強い人間に見えて実は人生でとても辛い経験をしていることを奥深くに隠しているキャラクターにとても惹かれます。土から芽が出てくるような、歴史が誕生するような瞬間に、私は非常に興味があるのです。
ルナとアマルの話は水面下で起こります。ルナは現在という場所に自分の進む道を見つけることができる女性です。とても本能的で、過去を過去として置くべき場所に置き、前向きに生きようとしています。過去の嫌な思い出は既に自分の後ろに置き去りました。だからこそアマルの変化に戸惑い、何が起こっているのか理解できずにいるのです。
それでもルナは「より良い人」になろうとしているアマルを理解しようとします。ですが、ルナは二人の人生に(他者)のルールを適用することを決して許しません。表面化、アマルの中には日常の些細なつまづきから地殻変動によって作られた過去の何層にも重なるレイヤー(層)があります。彼は自身の中だけで物事を整理し、人生を構築しようとします。しかしアマルのその新しい構造はルナとの調和を乱すのです。
アマルが過去を新しい道具で直そうとしたとき、ルナは自身の過去に向き合わなければならなくなります。自分が生まれ育ち、戦時下には強制的に追い出されてしまったビリエナの家に初めて戻ります。


 

 









■監督・脚本:ヤスミラ・ジュバニッチ
1974年サラエボ生まれ。サラエボ演劇アカデミー舞台・映画監督科を卒業。映画製作に携わる前は、アメリカのヴァーモントを拠点とする人形劇の劇団「ブレッド&パペット」でピエロとして活躍していた。1997年から、自身が設立したアーティストのための協会であるDeblokadaにて映画製作を始める。
本作『サラエボ、希望の街角』は、長編第2作目。デビュー作『サラエボの花』は2006年ベルリン国際映画賞にて金熊賞を受賞し、AFI映画祭の審査委員賞とヨーロッパ人権協会のグランプリオディッセイを受賞した。戦争を生き延びたシングルマザーのエスマ、彼女の10歳の娘サラの、痛ましい秘密にまつわる感動のドラマ。
ほかに、ドキュメンタリー『Images From The Corner』(03)、短編『Birthday』(04)、などがある。


■スタッフ
監督・脚本:ヤスミラ・ジュバニッチ
撮影:クリスティーン・A・マイヤー
編集:ニキ・モスベック
美術:ラダ・マグライリッチ、アミル・ヴーク
衣装:レイラ・ホジッチ
音楽:ブランコ・ヤクボヴィッチ
プロデューサー:ダミル・イブラヒモヴィッチ、ブルノ・ワグナー、バーバラ・アルバート、カール・バウムガルトナー、ライモント・ゲーベル、レオン・ルチェフ

     

 

 

   


(C) 2009 Deblokada / coop99 / Pola Pandora / Produkcija Ziva/ ZDF-Das kleine Fernsehspiel / ARTE

原題:NA PUTU
2010年/ボスニア・ヘルツェゴビナ、オーストリア、ドイツ、クロアチア合作映画/ボスニア語、クロアチア語、セルビア語/1時間44分 /カラー/シネマスコープサイズ
字幕翻訳:古田由紀子
配給:アルバトロス・フィルム、ツイン