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ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路
Nannerl, La Soeur de Mozart

2011年春 Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開


■ストーリー
 18世紀中頃。ザルツブルクを旅立ったモーツァルト一家の長い演奏旅行も 3年の歳月を重ねようとしていた。そのとき、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、まだわずか 11歳。彼のヴァイオリン演奏と、4歳年上の姉ナンネルの伴奏は各地で絶賛され、ブリュッセルではカール・オイゲン公の御前演奏の機会に恵まれた。しかし、報奨金代わりに懐中時計や煙草入れといった豪華な装飾品が贈られたところで、それらは馬車の旅の足枷にしかならず、一家の生活は困窮を極めていた。
  パリのヴェルサイユ宮殿に向かう途中、村の女子修道院に身を寄せた翌朝、いつものようにヴォルフガングとナンネルが演奏の練習を始めると、その音色を聞きつけたのか、3人の少女がどこからともなく姿を現わした。彼女たちは王の娘で、枢機卿の命令によって修道院の隣家に軟禁されていたのだった。中でも、両親の顔さえ知らずに幽閉された13歳の末娘ルイーズは音楽的才能にあふれたナンネルに魅了され、ふたりはたちまち意気投合し、永遠の友情を誓うのだった。ルイーズは言う。「あなたのような一家に生まれたかった」。
  ルイーズはナンネルに尋ねる。「愛の経験は?」「どうかしら? よく分からない」 教会に詰めかけた聴衆の前で、ナンネルはヴォルフガングの弾くパイプオルガンの演奏に合わせて、美しいソプラノでミサ曲を唄う。そんなナンネルを羨望の眼差しで見つめるルイーズ。ひとたび一家が旅立てば、ふたりは二度と再会することは叶わないかもしれない。

 


■キャスト
マリー・フェレ
マルク・バルベ
デルフィーヌ・シュイヨー
ダヴィッド・モロー
クロヴィス・フワン
サロメ・ステヴナン
リザ・フェレ
ニコラ・ジロー
アルチュール・トス
ジュリアン・フェレ
ルネ・フェレ
 




       

 

 パリに到着した一家は、宮廷での演奏会の後、王太子はナンネルにルイーズの近況を尋ねる。兄妹は面識がなかったのだ。やがて話題は音楽へと移り、王太子に命じられるまま、ナンネルはヴァイオリンを弾き、ソプラノで歌う。「クリスタルのように清らかで美しく、魂からの嘆きの歌声」。そう感嘆する王太子は、続ける。「作曲を頼めるか?あなたの曲を書くのだ」。そして、自らの内気を恥じる王太子は、ナンネルにこう告げる。「人間は謎だ。でも、あなたには好意を覚える」 思いがけない王太子の言葉に、胸が高鳴るナンネル。その日から、作曲に勤しみ、夜もなかなか寝付けない。思い切って、父に「弟の作曲の勉強に同席させて。私にも教えて欲しい」と頼み込むが、「女性に作曲は難しすぎる」とにべもない。ヴォルフガングが5歳のときに書いた曲は、実は自分が作曲したものだとのナンネルの告白に耳を疑う父は、しかし彼女の願いを頑として退けるのだった・・・

※   ※   ※

 

       
 




       


■プロダクション・ノートより

ルネ・フェレ監督メッセージ
ナンネル、カミーユ、アデル、そのほかの人々
モーツァルトの家族たちの膨大な書簡が実在します。それは 3年半もヨーロッパ中を一家総出で演奏旅行をするという常軌を逸した行動の資金を提供したザルツブルクの友人へ、モーツァルトの父レオポルドが送った手紙に始まります。感謝の意をこめてレオポルドは旅行の詳細を綴りました。自分の神童たちをヨーロッパ中の宮廷にお披露目するのは、尋常ではない冒険でした。私はこれらの手紙を読み、その旅行の様子を想像しました。馬車の中でさえ凍えるほど寒い冬、みすぼらしい宿、そして突然現れるヴェルサイユ宮殿、国王の謁見、嗅ぎタバコ入れなどの大人たちへのささやかな贈り物、素敵なドレス、絶えず資金不足になること、あるいは病気への恐怖、そしてもちろん次から次へと続く演奏会。そしてナンネルのキャラクター像が浮かびました。モーツァルトには姉がいたのです! 4歳年上の彼女もまた神童で、素晴らしい声楽家であり卓越したハープシコード奏者でした。舞台と共に育った子供で、3歳のときから父親から音楽を学びました。しかし彼女は女の子であり、やがてヴォルフガングが生まれました。この姉がハープシコードを弾くのを、小さい頃から驚きをもって眺めていたことが、幼い天才の才能を驚くような速さで開花させたことは疑いありません。ヴォルフガングはほどなくナンネルを凌駕し、弟と部屋を共有するには年をとりすぎてしまったナンネルは旅から離脱します。その後は、自らの人生を父親と弟の思い出に彼らの死後 40年あまりも捧げました。彼女と同じように自分を犠牲にした女性たち、カミーユ・クローデルやアデル・ユゴー、その他の永遠に忘れ去られた女性たちにも思いをはせて、この映画を作ろうと思ったのです。


 

 









■脚本・監督・製作:ルネ・フェレ
1945年、フランスノール地方ラ・バセ生まれ。俳優の道を目指し、ストラスブール国立演劇学校に入学。その後、父の死が原因となり、精神病院に入院する。この経験が初監督作品“Histoire de Paul”のテーマとなり、ジャン・ヴィゴ賞を受賞。
その後も出身地ノール地方を舞台にした自伝的作品2本発表。カンヌ映画祭に出品された“La Communion Solennelle”と“Bapteme”で成功を収める。90年代末にJLMプロダクションを設立。レジス・ヴァルニエ監督の『イースト/ウェスト遥かなる祖国』などに俳優として出演。
2007年、 “Il a Suffique Maman s'en aille”で最も私的な作品を発表。サガモール・ステヴナンとサロメ・ステヴナンが演じるカップルを通して、自身の娘たちとの関係について描いている。
監督作品は、Histoire de Paul(1975)、La Communion Solennelle(1977)、Fernand(1980)、L'Enfant Roi(1981)、『哀しみのアレクシーナ』(1985)、L'Homme qui n'etait pas la(1987)、Bapteme(1990)、Promenades d'Ete(1992)、La Place d'un Autre(1993)、Les Freres Gravet(1995)、『夕映えの道』(2000)、L'Enfant du Pays(2002)、Il a Suffi que Maman s'en aille(2007)、Comme une etoile dans la nuit(2009)、『ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路』(2010)。


■スタッフ
脚本 監督 製作:ルネ・フェレ
製作 編集:ファビエンヌ・フェレ
音楽:マリー=ジャンヌ・セレロ
撮影:バンジャマン・エシャザァレタ
助監督:ジュリアン・フェレ
美術:ヴェロニカ・フルブロット
衣装:ドミニク・ルイ

     

 

 

   


■オフィシャルサイト
www.nannerl-mozart.com

(C)copyright 2010 Les Films Alyne

2010年/フランス映画/フランス語/120分
原題:Nannerl, La Soeur de Mozart 英題:Nannerl, Mozart’ s Sister
字幕翻訳:松浦美奈
配給:アルバトロス・フィルム