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汽車はふたたび故郷へ
CHANTRAPAS

2012年2月18日(土)より、岩波ホールほか全国順次ロードショー


■ストーリー
 旧ソ連の一共和国だった頃のグルジア。ニコは、やがて夢をかなえて映画監督になった。
だが、苦労を重ねた結果ようやく完成したニコの映画は検閲によって「上映禁止」と判定されてしまう。
  ある日、フランスから大使がやってきた。ニコは友人の手引きで、大使の滞在先を訪れる。盗聴に気を配りつつ会談するニコたちだったが、その一部始終は何者かによって監視されていた。投獄され、暴行を受けるニコ。
  祖父母が用意してくれたワイロ代わりのワインを片手に、ニコが政府高官のもとへ出向くと、高官は遠慮がちに出国を勧めるのだった。
このままここにいても、ほんとうに作りたい映画を作ることは出来ない。ニコは、生まれ育ったグルジアを離れ、フランスへ旅立つ決心をした。

 


■キャスト
ダト・タリエラシュヴィリ
ビュル・オジェ
ピエール・エテックス
 




       

 

 自由をもとめてフランス・パリにやってきたニコ。幸いにもプロデューサーに作品を気に入られ、ニコは彼らの出資をもとに映画制作に取り掛かる。
だが、撮影所でニコを待ち受けていたのは、映画に商業性を求めるプロデューサーとの闘いだった。「独創性が強すぎる」「映画は90分を越えてはならん」
  ニコは自分が作りたい映画を作ることが出来るのだろうか?

※   ※   ※

 

       
 






       


■プロダクション・ノートより

オタール・イオセリアーニ監督インタビュー

映画の原題になっている「Chantrapas(シャントラパ)」の意味は?
――フランス語から生まれたロシア語です。19世紀末、サンクトぺテルブルクの裕福な家庭では、子供にイタリア歌曲を習わせていました。当時、ロシアの知的階級はフランス語を話せたため、子供たちを「Chantra(“歌う”の未来形)子」と「Chantrapas(“歌わない”の未来形)子」と選別しました。やがて、「Chantrapas」は、共通語となり、「役立たず」や「除外された人」という意味になりました。母国では検閲を受け、フランスでは期待よりも低い評価しか得られなかったこの映画の主人公ニコのようにね。ヴィクトル・ユゴーやフリッツ・ラング、ルネ・クレール、オーソン・ウェルズ、アンドレイ・タルコフスキー、そしてアレクサンドル・アスコリドフやゲオルギー・シェンゲラーヤ――みんな、母国を離れざるをえず不慣れな水の中でどのように泳ぐのかも分からずに内側の傷を抱えている「Chantrapas」です。

これは自伝映画ですか?
――『落葉』や私のすべての短編が上映禁止になったとはいえ、私はいつもやりたいことを何とかやっていましたよ。でも1979年、私はグルジアを去らなければならなくなりました。『汽車はふたたび故郷へ』は、映画作家たちのポートレートです。あの当時、120人の映画作家が体制の中で働いていましたが、検閲に打ち勝てたと言えるのは、5本の指に収まるでしょうね――セルゲイ・パラジャーノフ、アンドレイ・タルコフスキー、ゲオルギー・シェンゲラーヤ、グリェーブ・パンフィロフ、アレクサンドル・アスコリドフ。でも検閲が本当に厳しかったとは言えないかもしれません。公開禁止処分にしたとしても、体制は映画作家を尊敬していたのだと思いますよ。上映禁止になる前に、映画を完成させてくれたのだからね。

この映画をどのように定義づけますか。
――これは、私たちの周りをとりまく障害にもかかわらず、自分自身に正直である必要性についての寓話です。そもそも、大失敗するに決まっている。すべての文学の歴史がそれを証明しています。ロミオとジュリエットも同じです。正直であろうとして死にました。これこそ、私が観客の皆さんと共有したいことです。すべてにあらがって、石になる喜びです。


 

 









■オタール・イオセリアーニ監督
1934年、旧ソ連グルジア共和国のトビリシに生まれる。
数本の短編映画を経て、62年に中編デビュー作『四月』を制作するが、この作品は当局によって上映を禁止された。良質なワインの生産をめぐって工場側と対立する若い醸造技師の奮闘を描いた『落葉』(66)が1968年のカンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞と第1回ジョルジュ・サドゥール賞を受賞。70年に『歌うつぐみがおりました』、76年に『田園詩』を発表。
79年、活動の拠点をパリに移す。『月の寵児たち』(84)、『そして光ありき』(89)、『群盗、第七章』(96)がヴェネチア国際映画祭で審査員特別大賞を受賞し、『蝶採り』(92)は同映画祭PASINETTI賞を受賞した。
99年、カンヌ国際映画祭に特別招待作品として出品された『素敵な歌と舟はゆく』は、ルイ・デリュック賞、ヨーロッパ映画アカデミー選出による年間最優秀批評家連盟賞を受賞。2002年の『月曜日に乾杯!』はベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)と国際批評家連盟賞をダブル受賞。


■スタッフ
監督・脚本:オタール・イオセリアーニ
撮影:ライオネル・カズン(グルジア)、ジュリー・グルンバウム(フランス)
美術:マニュ・ド・ショヴィニ
音楽:ジャルジ・バランチヴァゼ

     

 

 

   


■オフィシャルサイト
www.bitters.co.jp/kisha/

(C)2010 Pierre Grise Production

原題:CHANTRAPAS
2010年/フランス=グルジア/126分
日本語字幕:寺尾次郎
配給:ビターズ・エンド