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最初の人間
Le Premier Homme

2012年12月15日(土)、岩波ホールほか全国順次公開


■ストーリー
 1957年夏。40代のジャック・コルムリはブルターニュのサン・ブリューの仏軍墓地に立つ父の墓の前で静かに黙想していた。彼は父を知らない。墓石を見て、父が死んだ年齢を、自分がすでに越えていることに気付く。
 数日後、ジャックは母を訪ねるため、戦下にあるアルジェリアへと向かう。空港に着くと、フランスによるアルジェリアの植民地化に疑問を呈するジャックと同じ考えを持つ学生が大学での討論会へ招待しようと、彼を出迎えた。

「帰れ、コルムリ!我々には裏切り者など無用だ!」
 大学での討論会は、仏領アルジェリアを進める保守派と革新派が入り交じり、熱気を帯びていた。ジャックが演台に立ち、アラブ人とフランス人の共存を提言すると、過激派が講堂に押し入って討論会は混乱に陥った。

 


■キャスト
ジャック・ガンブラン
カトリーヌ・ソラ
マヤ・サンサ
ドゥニ・ポタリデス
 





       

 

 翌日、ジャックは本来の目的である母に会う。久方ぶりの我が家に、ジャックは、父の写真を見つめながら、自分の幼少の頃に思いを巡らせた。
  第一次世界大戦で父を亡くした小学生のジャックは、母とその弟のエディエンヌ、そして父方の祖母と共に暮らしていた。勉学に明るく、中学への進学を希望していたが、祖母の反対により、エディエンヌとともに新聞工場で働いていた。そんな状況を打開してくれたのが、ベルナール先生だった。祖母に直談判してくれ、無教養な家庭に生まれた自分が思いもよらなかった人生へと送り出してくれたのだ。

  あくる日、ジャックはアラブ人居住区に足を運び、小学校時代の級友、ハムッドに会う。ハムッドはその昔、ジャックがフランス人であるというだけで、ケンカをふっかけ、蔑んでいた人物だ。ハムッドは、息子アジズが過激派のメンバーであるとして不当逮捕されたので、その無実をはらしてくれるようジャックに嘆願する。政府機関に顔がきくジャックは、早速アジズを釈放すべく上層部に掛け合う。
  アルジェリアの大地に生まれながら敵同士に変容してしまったアルジェリア人とヨーロッパ人。ジャックはその和解と共存の為に、懊悩する・・・

※   ※   ※

 

       
 




       


■プロダクション・ノートより

監督:ジャンニ・アメリオ・インタビュー

「最初の人間」の脚色は原作から取られた1950年代に先立つシークエンスを主に描く。しかし、1957年、この物語における現在、そしてほとんど小説に書かれていない、おそらくこの小説が未完だからだが、その時点についても状況やセリフを描くために我々は幸運にも、カミュの家族の記録に接することができた。私たちの望みは、不安定な隘路に立つ我々の語り手にして主人公にアルベール・カミュの思索と行動の基盤をあたえることだ。
戦争の予感が主人公ジャックの視点のベースである。彼は死刑を宣告された幾人ものアルジェリアのイスラム教徒を救うために尽力を惜しまなかった。彼はアルジェリアの独立に対して、明確な立場を取らなかった。深く故郷を愛し、FLN、フランス軍の双方による暴力を収めたいと、彼は微妙な位置を保っていた。武力だけが歴史を変えると信じる人々に対し、彼は、昨日の犯罪は今日の犯罪を認めも裁きもしないと言う。彼は市民を標的にした威嚇行為は、通常の政治的な武器ではないが、長い目で見れば、本当の政治的な戦場を破壊するものであると信じていた。
映画化に当たって、私がアルベール・カミュと同様の立場を取ることが重要だったのです。今なお、自身に深く刻まれた戦争の記憶を抱えている人々たちの懊悩が、正確に表現されている映画を作りたかったのです。


 

 








■監督:ジャンニ・アメリオ
1945年イタリア・カラブリア地方の小さな村に生まれる。2歳の誕生日を迎える前に、父が家族を残して出奔。
毎週の楽しみは祖母の連れて行ってくれる映画だったという。大学に進学し哲学を学んだもののドロップアウト。映画監督の夢を追って、ローマに移り、ヴィットリオ・デ・シーカのもとで働き始める。
『1900年』の撮影中のベルトルッチを追ったドキュメンタリー「BERTOLUCCI SECONDO IL CINEMA」('75)などを撮る。1982年には、初めての長編映画で、ジャン=ルイ・トランティニャンを主役に迎えた『COLPIRE AL CUORE』を完成させる。死刑囚と裁判官の関係を軸に、人間の尊厳を問いかける『宣告』(’90)では、米アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされる。
孤児院へ向かう幼い姉妹と、その二人を送り届ける憲兵の旅を描いた『小さな旅人』('92)では、カンヌ映画祭審査員特別グランプリを受賞。
主な作品に『LAMERICA』('94)、『いつか来た道』('98)、『家の鍵』('04)(ヴェネチア国際映画祭で三部門の賞を受賞、米アカデミー賞外国語映画賞のイタリア代表作品に選出)などがある。


■スタッフ
監督:ジャンニ・アメリオ
脚本:ジャンニ・アメリオ
原作:アルベール・カミュ
撮影:イヴ・カープ
衣装:パトリシア・コリン
音楽:フランコ・ピエルサンティ
製作:ブリュノ・ペズリー、フィリップ・カルカッソンヌ

     

 

 

   


■オフィシャルサイト
http://www.zaziefilms.com/ningen/

原題:Le Premier Homme
2011年/フランス、イタリア、アルジェリア合作 /フランス語/35ミリ/ヴィスタサイズ/105分
日本語字幕:寺尾次郎
配給:ザジフィルムズ