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駆ける少年
THE RUNNER

2012年12月22日(土)より、オーディトリウム渋谷にて全国順次ロードショー


■ストーリー
 70年代初頭のイラン、ペルシャ湾沿岸の小さな港町。少年アミルは浜辺に打ち捨てられた廃船に一人で暮らしている。ゴミ捨て場から空きビンを拾ったり、外国船の船員が海に捨てたビンを拾い集めたり、水兵の靴磨きや水売りなどをして何とか生計を立てている。

 親もなく苛酷な環境にありながらも、アミルはまるでハックルベリィ・フィンのように一人の生活を楽しんでいる。彼には好きなものがたくさんあるからだ。大きな白い船、どこか遠くに連れて行ってくれる飛行機、外国の綺麗な写真、チャップリン、友だち…そして走ること。アミルの仲間たちも皆、同じように天涯孤独の身の上だ。彼らはありあまるエネルギーを試すように全身で走る。誰も暗い顔はしていない。
  あるとき、競走に負けてもなお走り続けるアミルに友だちはいぶかる。アミルは「自分の力を確かめたかったんだ」と答えるのだった。

 


■キャスト
マジッド・ニルマンド
ムサ・トルキザデエ
アッバス・ナゼリ
 




       

 

 ある日、アミルは自分が学校行っていていい年齢なのに、読み書きができないことに気づき愕然とする。文字を知ることは世界を知ること。アミルは取り憑かれたように字を覚え始める。
  そしてついに来た「火の競走」の日。少年たちは天然ガスの炎が轟々と逆巻くなかに置かれた氷の塊を求めて熾烈な競走をくりひろげる。

※   ※   ※

 

       
 




       


■プロダクション・ノートより

監督:アミール・ナデリ インタビュー

本作のアミル少年には、ナデリ監督本人の体験が色濃く反映されている。ナデリが生まれる前に父が他界、6歳の時に母を失う。兄とともに叔母夫婦に引き取られ、正式な教育は12歳までしか受けていない。このころナデリ少年を支えたものこそが「映画」であり、このころから「映画を作る」と決めていたらしい。そして12歳で単身テヘランへ旅立ち、映画への強い憧れを胸に大都会に出てきたナデリは、ひたすら目標に向かってつき進む。映画製作会社のティーボーイから始め、制作部の雑用係、そしてスチールカメラマンを経て、1970年「グッバイ、マイフレンド」でいきなり監督デビューし、一躍脚光を浴びる。その後、本作品でイスラム革命後初めてイラン映画が映画祭で受賞。アメリカで映画を撮るという夢を『マンハッタン・バイ・ナンバーズ』で実現する。

ほとんどすべてが自分に起こったことです。わたしは小さい時に父を亡くし、おばさん夫婦に育てられました。おばさんは大変優しかったのですが、ご主人は怖い人で、苦手だったんです。だから彼が家にいるときは家に近づかないで、一人で外で暮らしていました。そして彼が家にいないときを見計らって家に戻っていたのです。
親がいない、家族がいないというのは子供にとっては悲惨なことかもしれません。でも、私は一人ぼっちでいた時は、逆にいろんなものを発見していました。一人きりでいたので、想像力が高まって、一人でお話を作ったりすることが多くなりました。自分の中で持っていた夢なんかが強くなってきて、とりわけ映画に対する興味が固まってきたのは、家族がおらず、一人で自立しなければならなくなった時期でした。その時期が自分にとっては一番大事だったんじゃないかと思います。


プレス資料より

 

 









■監督:アミール・ナデリ

1945年、イランのペルシャ湾岸の都市アバダンに生まれる。アッバス・キアロスタミとともに児童青少年知育協会に所属。イラン映画が国際的に脚光をあびるきっかけを作ったイランを代表する巨匠。12歳でテヘランに上京。映画製作会社のティーボーイから始め、制作部の雑用係、そしてスチールカメラマンを経て、1970年「さらば友よ」で監督デビュー。
『ハーモニカ』(74)はイスラム革命前のイラン映画の傑作の一つとして知られている。1976年にはニューヨーク・ロケによる「メイド・イン・イラン」を監督。イスラム革命後の『駆ける少年』(86)、『水、風、砂』(89)で2作連続してナント三大陸映画祭グランプリを獲得。アメリカに移住し、1993年、アメリカ映画『マンハッタン・バイ・ナンバーズ』を監督、この『マンハッタン・バイ・ナンバーズ』と、1997年のカンヌ映画祭「ある視点」に選ばれた「A.B.C. マンハッタン」、『マラソン』はニューヨーク三部作として高い評価を得ている。
ナデリ監督は日本映画にも造詣が深く、親日家である。特に東京フィルメックスでは、2002年の審査員をはじめとして、ローマ国際映画祭でロベルト・ロッセリーニ批評家賞を受賞した『サウンド・バリア』(05)も、ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門でSIGNIS賞を受賞した『ベガス』(08)も特別招待作品として上映され、2011年には審査委員長を務めた。2003年には山形国際ドキュメンタリー映画祭で審査員を務めた。最新作『CUT』で念願の日本での撮影を果たし、第26回高崎映画祭特別賞、第21回日本映画プロフェッショナル大賞を受賞。




■スタッフ
監督・脚本:アミール・ナデリ
撮影:フィールーズ・マレクザデエ
編集:バハラム・ベイザイ
製作:児童青少年知育協会

     

 

 

   


■オフィシャルサイト
http://runner-movie.net/

(C)kanoon

原題:DAVANDEH  英題:THE RUNNER
1985年/イラン/35mm/91分
字幕翻訳:ショーレ・ゴルパリアン/土肥悦子/石田泰子
配給:『駆ける少年』上映委員会