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ローマの教室で
―我らの佳き日々―
Il rosso e il blu
THE RED AND THE BLUE

2014年8月23日(土)岩波ホールほか全国順次公開


■ストーリー
 ローマの公立高校。校長を務めるジュリアーナは、「教師は学校の教育だけすればいい」と言う考えの持ち主だ。二学期に入り、若き熱血漢ジョバンニが国語の補助教員としてやってくる。ジョバンニとは逆に、教育への情熱を失い「生徒はみんな頭が空っぽ」と嘆く美術史の老教師フィオリートは、他の教員とも交流を持たずに孤立していた。

 そんなフィオリートにとって、「生徒にやる気を起こさせる!」というジョバンニの情熱は冷笑の的だ。
一人暮らしをするフィオリートの楽しみは、「社会的生活」と称して2週間に1度のコールガールとの時間。東洋系の女性と一夜を過ごしたあと、エレナというかつての教え子から電話があった。
エレナは近くの臨床検査室に務めていて、会いたいと言う。フィオリートは、患者を装って彼女の勤務先を訪れるが、自分に気づかない彼女に落胆し、病院を後にする。

 


■キャスト
マルゲリータ・ブイ
リッカルド・スカマルチョ
ロベルト・エルリツカ
 




       

 

 自宅からトイレット・ペーパーを持参したりと、公立高校の厳しい財政をやりくりするジュリアーナ校長。ある日、体育館で寝袋に包まった生徒を見つける。母子家庭に育ったエリコは、三日前から母親が失踪していた。せきが止まらないので病院に連れて行くと、そのまま入院となってしまう。
その後、ジュリアーナは、入院中のエリコにパジャマを届ける。天涯孤独の彼の世話を仕方なく見る羽目になった彼女だが、必要最低限のことをし、校長としての義務を果たすだけと言い切る。

 ジョバンニは、欠席が続くアンジェラに、クラスみんなで手紙を書いたり、彼女が学校に戻ってくるよう奮闘する。そんなジョバンニにジュリアーナは、熱意は買うがやりすぎだと苦言する。ところが亡くなったはずのアンジェラの母を見かけたと言う生徒が出てきてジョバンニは戸惑う・・・・


※   ※   ※

 

       
 




       


■プロダクション・ノート

ジュゼッペ・ピッチョーニ監督より

私はロドリの「赤と青」を読み、学校という塹壕の一線の中にいるという状況から出発する映画を撮りたいという気持ちになった。
「赤と青」というタイトルに込められている核心は、我々が求めているものだが、それ以外にも新たな心情やテーマを摘み取りながら脚本を書いていった。
我々が何よりも心がけていたことは、誰もの人生においてかけがえのない時間の中でずっと守られ、大切にされるように心から願うものを確認することで、机上の空論や時事問題に終始することだけは避けたかった。

どの場面をとっても、ただの社会学的考察に終わらないように断片的な群像劇という形をとった。
ひとつひとつの声が固有のトーンを、それぞれの調子はずれな特質を持ち、その中では決して完全に調和した合唱を生み出すことはなく、同一のテーマをめぐって考えをめぐらせていく多様で豊かな響きの変奏となる物語だ。
今や、大人たちと子供たちのあいだの心を通わせるためのチャンネルが断たれてしまったように見える。
厳格な規則の欠如に苦しみ、新たな変革のモデルの樹立に失敗して苦しむ世界。
人物一人一人が秩序を見つけ出すという真摯な願望があり、人生との混沌とのはざまを器用に泳ぎ抜いていく世界。
その隔たりの中に、避けようのない過ちの余白が口を開ける。

とはいえ過ちとは、矛盾を含めて人生や他者と出会おうとする願望と現実の試みが存在する地点でこそ犯されるものであるから、まさに過ちにこそ知識に勝る位置づけがなされたのだ。
そして目標は、役者たちや子どもたち、異なる演技スタイルの絡み合い、そして世界を映し出す顔の数々に特別な注意を払いながら、何らかの真実を見つけ出すということになった。

舞台空間そのものと思える教室の中で、個性的な教師とともにある子どもたちの制御しようのないエネルギー、彼らの過ち、彼らの全くの計算のなさと保護網の欠如。
役者たちへ、子どもたちへ、それぞれの経験から引き出された自然さを有するばかりか、台本のページにも飽くことなく取り組んでくれたノンプロたちへ、すべての大人の役者たちへ、この仕事にかけてくれたおおらかな情熱へ、私の感謝は捧げられる。
それらすべてがなかったら、この映画は今の姿にならなかったはずだ。


 

 









■監督:ジュゼッペ・ピッチョーニ
1953年、イタリア、マルケ州アスコリ・ピチェーノ生まれ。1980〜1983年、ゴーモン映画学校に在籍。1987年発表の『青春の形見』でナストロ・ダルジェント賞、ヴィットリオ・デ・シーカ賞を受賞。
監督作品に、『Chiedi la luna』(1990)、『Condannato a nozze』(1992)、『Cuori al verde』(1995)、『もうひとつの世界』(1998)、『ぼくの瞳の光』(2001)、『映画のようには愛せない』(私が望む人生)(2004)、『ジュリアは夕べに出かけない』(2009)などがある。


■スタッフ
監督・脚本:ジュゼッペ・ピッチョーニ
脚本:フランチェスカ・マニエーリ
原案:マルコ・ロドリ著『赤と青』(原題)夏、晶文社刊行予定
撮影:ロベルト・チマッティ
美術:ルドリカ・フェラーリオ
衣装:ロレダーナ・ブシェーミ
編集:エズメラルダ・カラブリア
オリジナル音楽:ラッチェフ&カッラテッロ

     

 

 

   


■オフィシャルサイト
http://www.roma-kyoshitsu.com/

(C)2011 BiancaFilm

原題:IL ROSSO E IL BLU
2012年 /イタリア /イタリア語/101分/シネスコ
日本語字幕:岡本太郎
配給:クレストインターナショナル