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Corot: Souvenirs et Variations

コロー 光と追憶の変奏曲




2008年6月14日(土)-8月31日(日)
国立西洋美術館

The National Museum of Western Art

19世紀フランスの画家カミーユ・コロー。その魅力と秘密を再検証する大規模な展覧会。
コローはその名声にもかかわらず、本格的な展覧会は、国内外でも稀にしか開催されていない。

本展は、ルーヴル美術館所蔵のコローの代表作群を中心に、初期のロマン主義的風景からレアリスムの時代、夢想的な後期、繊細な人物画の数々を集大成する。油彩画・版画など、コローの作品80余点に加え、ルノワール、シスレー、モネ、ブラックなど、印象派からキュビストまで、コローの芸術に深い影響を受けた画家たちの作品をあわせて展示する。

 

 
ジャン=バティスト・カミーユ・コロー《真珠の女》
1858-68年
ルーヴル美術館
©Photo:RMN/distributed by DNPAC
 
 


 第1章 

 イタリアへの旅 

     
         
 
 
裕福な家に生まれたカミーユ・コローは、20代なかばにようやく絵画修業を始め、ミシャロンとベルタンの下で古典的風景画を学びます。1825年には最初のイタリア旅行でローマを訪れ、地中海の明るい光に満ちたイタリアの風景に魅了されて各地で写生に励みました。その後、コローは2度にわたってイタリアを訪れます。実景にもとづいて描かれた油彩習作を中心とするこれらのイタリア風景画は、その率直で瑞々しい表現が高く評価されています。イタリア各地で描かれた風景画や人物画を中心に、師の作品などもあわせ、コローの初期の作品群を紹介します。
   
 
ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
《ティヴォリ、ヴィラ・デステの庭園》
1843年 ルーヴル美術館
©Photo: RMN/ Herve Lewandowski/ distributed by DNPAC
           
 


 第2章

 フランス各地の田園とアトリエ

       
           

 
19世紀は鉄道は、パリの芸術家たちをフランス各地に写生の旅へ向かわせました。ノルマンディーやオーヴェルニュ、ブルターニュなどフランス各地を訪れ、友人らとともに戸外で数々の風景画を描きました。父親が別荘を購入したパリ近郊のヴィル=ダヴレーへはくり返し訪れ、水辺の風景などを詩情豊かに描きあげています。
フォンテーヌブローの森で写生に励んだコローはごく早い時期からバルビゾン村を訪れ、ルソーやミレー、ディアスらに出会いました。
春から夏に写生をし、秋から冬はパリのアトリエで、記憶をもとに、サロン出品に向けて大画面の風景画の制作に取りかかっています。
   
 

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
《ヴィル=ダヴレーのカバスュ邸》
1835-40年
村内美術館

       
   
 
     
   
 


 第3章

 パノラマ風景と遠近法的風景

       
           
 
 
ルネサンス以来の古典的伝統を引き継ぎつつ、レアリスムと抜群の造形力によって風景画に革新をもたらしたコローの作品は、アカデミスムの画家からも、前衛の画家からも賞賛されました。
城や大聖堂などを遠くに望んだ眺望図や、都市風景、幾何学的な形態への関心をしめす作品などを紹介します。また、シスレー、ルノワール、ドランなど、そこからインスピレーションを受けた画家たちの作品も展示します。
   
  ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
《ドゥエの鐘楼》 1871年 ルーヴル美術館
©Photo: RMN/ Jean-Gilles Berizzi/
distributed by DNPAC
       
           
 


 第4章

 樹木のカーテン、舞台の幕

       
           
 
  コローは生涯にわたって、舞台芸術に情熱をもち続け、役者や歌手を描いたスケッチを残しています。
木立を描いた一連の作品では、前景にヴェールのように枝を広げる木々が描かれていますが、それはちょうど舞台の幕の役割を果たし、霧の向うに見え隠れする遠景へ見る者の視線をリズミカルにいざなっていきます。鬱蒼と繁る木々のアーチの向うに道や川が遠のいていく奥行き感の表現は、演劇的な効果をあげています。こうした前景と後景のあいだの視覚的な戯れは、ピサロやゴーガン、モネらの作品に影響を見ることができます。

   
 
ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
《傾いた木》
1855-60年 ロンドン・ナショナル・ギャラリー
Photo © The National Gallery, London
       
           
 


 第5章

 ミューズたちの肖像

       
           
   
古代風あるいは民族的衣装をまとった空想的な女性像を中心にコローの人物画の数々を紹介します。
メランコリアのポーズやアトリエのモデル、楽器をもつ女などの伝統的な図像の自由な組み合わせがみられます。コローは、20世紀初頭の古典回帰の流れのなかで、17世紀の巨匠プッサンらとともにフランス美術の伝統の正統なる後継者とみなされていきました。ブラックをはじめ、キュビスムの画家たちがコローの女性像に対して模写とヴァリエーションを通した興味深いオマージュを捧げています。
   
 
ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
《青い服の婦人》
1874年 ルーヴル美術館
© Photo: RMN/ Herve Lewandowski/
distributed by DNPAC
       
   
     
ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
《マンドリンを手に夢想する女》
1860-65年 セントルイス美術館
Saint Louis Art Museum, Purchase
   
 


 第6章

 「想い出(スヴニール)」と変奏

       
 
       
           
  コローは、戸外で描いたスケッチを利用しながら、かつて旅した土地の想い出を追想してアトリエのなかで再構成し、「・・・の想い出」と題した多くの詩的な風景画をのこしています。
19世紀美術の重要な流れであるレアリスムとロマン主義、あるいは観念主義の合流点ともいえるこれらの「想い出」の風景は少しずつ叙述的な表現をはなれ、音楽的なリズムに満たされていきます。
そこには、形式的要素の自律化をめざし、抽象へとむかっていった20世紀芸術の担い手たちがもとめた新しい芸術的地平を見ることができるでしょう。
 
   
      ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
《モルトフォンテーヌの想い出》
1864年 ルーヴル美術館
© Photo: RMN/ René-Gabriel Ojéda/ distributed by DNPAC
   
     
テキストはプレス資料より抜粋して転載しています。
   
 
主催:国立西洋美術館/読売新聞東京本社/NHK


お問い合わせ・詳細:
国立西洋美術館
http://www.nmwa.go.jp