cinema

 

半世界

2019年2月15日、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開


■ストーリー

 とある地方都市。そのまたさらに郊外に暮らす高村紘とその妻、初乃、息子の明の。家族は、父から受け継いだ山中の炭焼き窯で備長炭を製炭して生計を立てている。
 中学からの旧友で、自衛隊員として海外派遣されていた沖山が、ある日突然、町へ帰ってきた。沖山は妻子と別れて戻ってきた様子。紘は同級生の岩井にも声をかけ、十数年ぶりに3人で酒を飲み交わす。

  ■キャスト
稲垣吾郎 長谷川博己 池脇千鶴
 渋川清彦 竹内都子
 
         
 



 

 
 翌日、廃墟同然だった沖山の実家を清掃し、住める状態にする3人。妻子と別れることになった原因も聞けず、どうすることもできない。
 紘の息子、明は反抗期の真っ最中で、どうやら学校でイジメも受けている様子だが、紘はそれに頓着してない。「おまえ、明に関心持ってないだろ。それが、あいつにもばれてんだよ」鋭いことを沖山に言われて、ハッとする紘。

 数日後、「俺の仕事、手伝えよ」
 過去から脱却できずにいた沖山を巻き込んで、一念発起する紘。

 これまで感じたことのない張り合いを感じ始めた紘。そんな父を見る明の目にも、変化が現れかけ、何もかも順調に向かい始めているようにみえていた・・・

         ■   ■   ■

 
         
   


監督・脚本:阪本順治 Q&A (抜粋)

―「半世界」というタイトルについて

 戦争をテーマにした写真展で、小石清さんというカメラマンを知りました。・・・日中戦争の従軍カメラマンとなるのですが、その写真集のタイトルが「半世界」。・・・その写真群はどれも、任地での中国人のおじいちゃんやおばあちゃん、子供たちや動物。市井の人々を路地や軒先で撮ったものばかり。・・・

 私の解釈ですが、このタイトルが示すのは、半分の世界ではなく、もう一つの世界という意味だと思います。現代に置き換えると、グローバリズムという大きなくくりで語られる世界は、人々の小さな営みが形作るもう一つの世界で成り立っていると。

―戻ってくる旧友を元自衛官にした理由は

 小さな町を舞台にした作品は、だいたいが、異質な誰かがやってくる、あるいは、故郷を捨てた人間が不意に戻ってくる、そんな発端から事件が起きる、町が騒がしくなる、という構成が多いですよね。
今回も、突然音信普通だった同級生が帰ってきたことで平凡な生活が動き、関係性が変わっていくというドラマをまず考えました。そしていろいろ悩んだあげく、帰ってくる旧友の職業は自衛官に。
 以前知ったことですが、自衛官の自殺者が年間60から100人といわれています。そのうち海外派遣から帰還した自衛官の割合はかなり多い。海外での任務によるストレスが原因だと国は認めたがらないので、この問題はあまり表には出ていませんが。
 国境を越えて仕事をし、世界を見てきた人間と、かたや故郷から出ることもなく、自分の生活だけに没し、小さな世界にいる人間たち。そんな両者を中心に、間口は狭いけれど、奥行きのあるものを撮りたかった。

 

 
 
       

監督・脚本:阪本順治

 1958年生まれ、大阪府出身。大学在学中より、石井聰亙、井筒和幸、川島透といった監督たちの現場にスタッフとして参加。89年、『どついたるねん』で監督デビュー。
芸術推奨文部大臣新人賞、日本映画監督協会新人賞、ブルーリボン賞最優秀作品賞ほか数々の映画賞を受賞。『顔』(00)では、日本アカデミー賞最優秀監督賞、毎日映画コンクール日本映画大賞・監督賞を受賞。
 SFコメディ『団地』(16)で藤山直美と再タッグを組み、第19回上海国際映画祭にて金爵賞最優秀女優賞をもたらした。その他の主な作品は、『KT』(02)、『亡国のイージス』(05)、『魂萌え!』(07)、『闇の子供たち』(08)、『座頭市 THE LAST』(10)、『大鹿村騒動記』(11)、『北のカナリアたち』(12)、『人類資金』(13)、『ジョーのあした─辰吉丈一郎との20年─』(16)、『団地』(16)、『エルネスト もう一人のゲバラ』(17)などがある。


■スタッフ
監督・脚本:阪本順治
撮影:儀間眞吾
美術:原田満生
編集:普嶋信一
音楽:安川午郎
衣装:岩崎文男
製作担当:松田憲一良
製作総指揮:木下直哉
プロデューサー:椎井友紀子

 
       

■オフィシャルサイト
http://hansekai.jp/

(C)2018 「半世界」 FILM PARTNERS

製作年:2019年
上映時間:119分
製作国:日本
製作・配給:キノフィルムズ